研究課題/領域番号 |
19K19244
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
糸瀬 昌克 昭和大学, 歯学部, 助教 (30806576)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs) |
研究実績の概要 |
外科的手術や歯周疾患などで生じる顎骨欠損や、顎関節損傷による骨・軟骨欠損は、機能・審美障害によってQOL低下に影響することから、組織欠損の回復・改善は、口腔外科臨床の重要課題のひとつである。本研究は、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)を、歯科領域の硬組織再生療法へ応用することである。ADRCsは多分化能をもつなど幹細胞の特性を備えるほか、採取時の簡便性・侵襲の低さから、形成外科領域などにおいて再生医療の細胞ソースとして応用されている。頬部脂肪体など脂肪組織中のADRCsによる顎骨欠損の再建、歯周疾患、顎関節損傷の改善に向けた新たな再生技術開発を検討する。 10週齢の雄SDラットの腹部から鼠蹊部の皮下脂肪組織を採取し、酵素処理(セレース リエージェント:サイトリ・セラピューティクス社)で分散したADRCsを回収した。得られたADRCs中にCD31(-), CD34(+), CD45(-)細胞の脂肪由来幹細胞(ASCs)が認められた。ADRCsをBMP-2含有の骨芽細胞誘導培地で3週間培養すると、alkaline phosphatase (ALP)陽性の骨芽様細胞が認められ、石灰化の指標となるAlizarin red染色陽性、von Kossa染色陽性を示した。Insulin含有の軟骨細胞誘導培地で3週間培養すると、Alcian Blue染色陽性の軟骨細胞様細胞が認められた。以上の結果から、ラット皮下脂肪組織由来のADRCsが、多分化能を有することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関節円板損傷または顎関節損傷のモデルラット作成のために、上下顎切歯間に開口器を装着し強制開口を1日数時間5日間続け顎関節の退行性変化を期待した。あるいは、片側臼歯部咬合面にレジン盛り上げ、片側の顎関節に過度な負荷を加えて顎関節の退行性病変を誘発させることを試みたが、個体差が大きいため疾患モデルとしての再現性を得られるに至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続いて、関節円板損傷または顎関節損傷のモデルラット作出の条件を検討する。また、顎骨欠損や歯周疾患を想定したモデルラットは、歯科用トレフィンバーにて頭頂骨へ縫合部を越えない円形の骨欠損をつくりその後閉傷する。術後1週毎にCT撮影で観察し、観察終了後には頭頂骨を摘出し、固定、脱灰、組織切片作製後H-E染色とVon Kossa染色から骨の自然治癒の程度を解析する。ADRCsによる膝半月板再生の先行研究から、アテロコラーゲンスポンジ(MIGHTY: KOKEN社製)にゲルを浸透することで修復半月板を誘導できたことから、骨欠損ラットに同様の処置を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
疾患モデル動物の作成が遅れて骨組織再生後の遺伝子発現とタンパク質発現の解析に至らなかったため、前年度の残金はPCR試薬と組織解析用抗体の費用にあてる。
|