研究課題
外科的手術や顎関節損傷による骨・軟骨欠損の回復・改善を目的として、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)による硬組織誘導能を検討した。ラットから採取した皮下脂肪組織を、酵素溶液(セレースリエージェント)で調整したADRCsは培養条件によって、骨芽細胞様細胞あるいは軟骨細胞様細胞へと分化できる多分化能を有した。in vitroで確認したADRCsの多分化能をin vivoに応用するために、関節円板損傷または顎関節損傷のモデル動物作成に取り組んだ。ラット顎関節は極めて微細かつ術野確保が困難で、技術的要因に左右すると共に、個体差によるばらつきが大きく再現性を得られなかったことから、軟骨組織である半月板について組織形態学アプローチの他に物理化学的に解析した。ラット脂肪組織から分離したADRCsをアテロコラーゲンスポンジに注入し、内側半月板を部分切除したラット膝関節へ移植した。術後12週後に観察すると、スポンジ単体に比べてADRCsを注入したアテロコラーゲンスポンジは、切除部分の線維性軟骨様組織の修復が進みⅡ型コラーゲン陽性域が広く観察された。顎関節においても、咀嚼による荷重が関節軟骨に強く影響すると考えられることから、修復された半月板に対してナノインデンテーション法を用いて「硬さ(強さ)」と「しなやかさ(粘弾性)」を物理化学的に解析した。ナノインデンテーション法の解析結果から修復半月板は、既存の軟骨組織に比べて、硬さが増して粘弾性は低下した。修復半月板を物理化学的に評価することは重要で、結果から既存の半月板の値により近づける必要があることが明らかになった。ADRCsは骨髄などに比べ低侵襲かつ移植時に新鮮な細胞が十分量採取できることから、顎関節などの軟骨組織再生医療の細胞ソースになり得ることが示唆された。
すべて 2020
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