研究課題/領域番号 |
19K19246
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
金子 児太郎 東京医科大学, 医学部, 助教 (50826964)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 変形性顎関節症 / 8-ニトロ-cGMP / 破骨細胞 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究に関しては、まずは骨のリモデリングに関する破骨細胞と骨芽細胞を使用し、一酸化窒素の新規セカンドメッセンジャーである8-ニトロ-cGMPがおのおのの細胞にどのように作用するかを明らかにする研究から始めていった。当該年度の結果より内因性の8-ニトロ-cGMPが破骨細胞の分化を促進し、骨芽細胞の石灰化を抑制するメカニズムについてより詳細な経路が判明してきた。最終的なターゲットとなるグアニル化タンパク質の同定に関してまだ研究を行っているところではあるが、これにより8-ニトロ-cGMPが炎症性骨吸収において骨吸収促進に関与している可能性がより高くなった。 当該年度の結果から変形性顎関節症が生じた下顎頭部で一酸化窒素が生じることから、8-ニトロ-cGMPが下顎頭の変形に関与している可能性がより高まり、今後計画しているマウスでのin vivo実験に繋がると思われる。8-ニトロ-cGMPのターゲットとなるタンパク質を同定する細胞の研究を引き続き行いながら、次のマウスの実験の段階に移行していく予定である。また、関節リウマチや変形性膝関節症など他の炎症性骨吸収がみられる疾患にも8-ニトロ-cGMPが関与すると思われ、本研究の結果が炎症性骨吸収が起こる疾患のメカニズムに対して新しい形で検討でき、治療法に結びつく可能性があると思われる。現在は当該年度の研究で得られた結果をもとに、破骨細胞での研究結果の一部はすでに論文にまとまっているので、骨芽細胞での研究結果を現状までまとめ論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究計画として8-ニトロ-cGMPによる生理的骨リモデリング調整のメカニズムを明らかにすることを目的として研究を進めてきた。その中でも破骨細胞と骨芽細胞における内因性の8-ニトロ-cGMPの機能を解析する実験に関しては明らかにできており、8-ニトロ-cGMPの分解反応を担うCARS2の遺伝子をノックダウンさせることで破骨細胞の分化が促進され、骨芽細胞の石灰化が抑制され、遺伝子発現の変化も解明された。しかし、もう一つの解析として挙げていた破骨細胞と骨芽細胞に及ぼす作用に対する8-ニトロ-cGMPターゲットタンパク質の同定は候補はいくつか上がっているものの、現状ではまだ検索途中である。従来は関与するすべてのタンパク質を上げて抽出する方法を考えていたが、多くの時間を要することになることが判明し、困難であったため、現在はターゲットを絞って行っていく方法に変えて実験を行っているため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については当該年度の研究結果より、実際の変形性顎関節症で8-ニトロ-cGMPが関与している可能性が高くなったため、マウスを使用したin vivoの実験に移っていく。疾患モデルマウスにあたる変形性顎関節症マウスの作成をまずは行っていき、組織学的に8-ニトロ-cGMPの関与を検討する。加えて、8-ニトロ-cGMPの代謝に関与するCARS2のノックアウトマウスが共同研究を行っている施設で作成されているので、疾患モデルマウスが作成できるようになれば、ノックアウトマウスも使用していく。同時並行で当該年度で達成できなかった破骨細胞と骨芽細胞の変化における8-ニトロ-cGMPのターゲットとなるタンパク質の同定に関しても進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の行った実験に関しては基本的に以前から行っていた細胞を使用した実験の延長線上であるために出費に関しては大きく抑えられたと思われる。当該年度の実験計画で行えなかった、8-ニトロ-cGMPが破骨細胞と骨芽細胞のどのタンパク質に作用しているかを検索することを本年度も継続して行っていく予定である。現在ターゲットを絞って実験をおこなっているが、明らかにならない場合は網羅的に液体クロマトグラフィータンデム質量分析を行う必要の可能性があり、その場合の大きな費用がかかる可能性が高いので翌年度分として費用を請求した。
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