研究課題/領域番号 |
19K19250
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
中村 那々美 鶴見大学, 歯学部, 臨床助手 (40824909)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛍光観察法 / VELscope / IllumiScan / 上皮性異形成 |
研究実績の概要 |
従来上皮性異形成の領域を検出するため、ヨード染色法が用いられているが、ヨード染色法にはヨードの粘膜刺激性、ヨードアレルギー患者への適用外、さらにヨード染色の機序のために歯肉や硬口蓋などの角化粘膜には適用できないという弱点がある。一方、新しい非侵襲的な上皮性異形成検出法として蛍光観察法がある。これは、健常粘膜では青色励起光の照射によって粘膜内の自家蛍光物質が緑色光を発するのに対し、上皮性異形成を伴う粘膜ではその現象が生じず、蛍光の消失(FVL)となり黒色領域として検出されることを応用した方法である。 本研究では、IllumiScanおよびVELscopeを用い、蛍光観察法の客観的指標として、健常粘膜とFVL部の輝度比からカットオフ値を設定し、病理組織学的診断をゴールドスタンダードとして舌・頬粘膜の上皮性異形成の検出精度を求め、その臨床応用の可能性についてヨード染色法と比較検証した。 結果、輝度比を用いたAVMによる舌および頬粘膜の上皮性異形成の検出精度は、 IllumiScanは、感度90.4%、特異度70.4%、正診率86.0%であった。VELscopeは、感度90.4%、特異度66.7%、正診率85.1%であった。IOMにおける舌および頬粘膜の上皮性異形成の検出精度は、感度96.8%、特異度14.8%、正診率78.5%であった。 以上のことから、IllumiScanおよびVELscopeを用いた客観的蛍光観察法は、ヨード染色法よりも正診率が高く、舌および頬粘膜の上皮性異形成の補助検出法として臨床応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例数も集まり、解析もある程度進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1年次にはサンプル収集に集中し、さまざまな症例に対して蛍光観察装置を使用し、蛍光観察法が特に有効と考えられる口腔内の適応部位を検索した。その結果、口腔粘膜の中でも歯肉や硬口蓋のような角化粘膜ではない舌および頬粘膜が適切であることが分かった。また、客観的蛍光観察法(AVM)については、撮影した画像データをIllumiScanは専用ソフトにて、VELscopeはimageJを用いて輝度を測定した。輝度比の算出方法は蛍光ロス(FVL)における最黒点の輝度を病変部輝度、同一照射野内で病変から離れた緑色部位(IllumiScan)および白色部位(VELscope)3か所の平均輝度を健常部輝度と定義し、輝度比(LNR)を算出した。また、算出したLNRを基に統計ソフトEZRでROC曲線を作成し、感度と特異度の和が最大となる点であるYouden indexをLNRのカットオフ値とした。客観的AVMでは、この求めたカットオフ値をFVLの基準として、カットオフ値以上を上皮性異形成あり、カットオフ値未満を上皮性異形成なしと定義して判定した。 検出精度を算出したところ、従来の上皮性異形成の検出法であるヨード染色法と比較してIllumiScanやVELscopeを用いた客観的蛍光観察法において正診率が高いことが分かった。 今後はSox2、OCT4、WNT5A、PARP、BRCA1/2、E-cadherinなどの免疫染色を実施し、蛍光観察法の結果と相関があるか検証予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年次はサンプル収集に重点をおき、多くの検体を収集することができた。収集した検体の画像については、IllumiScanの専用ソフトおよびImage Jにて画像の輝度を測定した。輝度比(LNR)の算出方法は、蛍光ロス(FVL)における最黒点の輝度を病変部輝度、同一照射野内で病変から離れた緑色部位(IllumiScan)および白色部位(VELscope)3か所の平均輝度を健常部輝度と定義し、輝度比を測定した。さらに算出したLNRを基に統計ソフトEZRでROC曲線を作成した。同様にEZRで統計処理を行い蛍光観察法やヨード染色法の診断精度を算出したことから、消耗品等支出が少なかった。 2年次からはSox2、OCT4、WNT5A、PARP、BRCA1/2、E-cadherinなどの抗体を使用し免疫染色を進めていく予定である。そのため、抗体をはじめとした試薬やプレパラートなどの消耗品を購入予定である。
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