従来上皮性異形成の領域を検出するため、ヨード染色法(IOM)が用いられているが、ヨード染色法にはヨードの粘膜刺激性、ヨードアレルギー患者への適用外、さらにヨード染色の機序のために角化粘膜には適用できないという弱点がある。一方、新しい非侵襲的な上皮性異形成検出法として蛍光観察法(AVM)がある。これは、健常粘膜では青色励起光の照射によって粘膜内の自家蛍光物質が緑色光を発するのに対し、上皮性異形成を伴う粘膜ではその現象が生じず、蛍光の消失(FVL)となり黒色領域として検出されることを応用した方法である。 本研究では、IllumiScanおよびVELscopeを用い、蛍光観察法の客観的指標として、健常粘膜とFVL部の輝度比からROC曲線およびYouden indexを用いてカットオフ値を設定し、病理組織学的診断をゴールドスタンダードとして舌上皮性異形成の検出精度を求め、その臨床応用の可能性についてヨード染色法と比較検証した。また、免疫組織学的検査を行い比較した。 客観的評価法である客観的AVMのカットオフ値はIllumiScanが1.42、VELscopeが1.62となった。また、客観的AVMによる舌上皮性異形成の検出精度は、 IllumiScanは、感度91.7%、特異度81.3%、正診率90.0%であった。VELscopeは、感度89.3%、特異度87.5%、正診率89.0%であった。一方、IOMは、感度96.4%、特異度25.0%、正診率85.0%であった。 免疫組織学的診断結果は、E-cadherin、OCT4にて上皮性異形成での発現が高く、上皮性異形成なしと比較して有意差を認めた。 以上のことから、IllumiScanおよびVELscopeを用いた客観的AVMは、IOMよりも正診率が高く、舌上皮性異形成の補助検出法として臨床応用できる可能性が示唆された。
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