本研究の目的は、1歯原性腫瘍の治療に対し、遺伝子発現の変化を基に、確実な治療法選択の基準を作成すること、2ゲノム編集技術を用いて病変発症のメカニズ ムの解析と、遺伝子修復による治療の可能性を探索することである。まずは1を達成する第一段階として、研究に適した症例の検索と検体の採取が必要であったが、長期にわたるコロナ禍のため新規受診患者の大幅な減少により、検体採取が困難な状況が続いており、研究中の検体採取に時間を要した。一方で、 研究の対象とする疾患を選別するために、病変の拡大傾向や再発有無などの臨床的評価を行う必要があったため、これまで治療を行った歯原性腫瘍の症例において、X線画像や病理画像及び術中所見などの検索を継続し、再発の有無についてデータを集めた。その中で、将来的に再発の恐れが指摘されている稀な歯原性腫瘍の症例や、歯原性腫瘍の悪性転化によって生じたと思われる顎骨中心性癌の症例などがあり、長期的に経過を追うことができた。それらをまとめて、遺伝子の発現変化について検索を行い解析を進め、得られた所見については、文献的考察を加えた上で、論文として投稿し実際に完成した。その他、関連する口腔外科疾患については学会発表を行った。今期にて研究期間は終了となるが、この結果をもとに、将来的に遺伝子解析の結果と臨床所見や再発等の経過を照らし合わせて、再発リスクや術式の選択に至る診断基準を検討する必要があるため、可能な範囲でのデータ蓄積を継続する予定である。
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