研究課題/領域番号 |
19K19257
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
前田 敏博 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (50792149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨細胞 / 機械的刺激 / RANKL / アクチンリモデリング / plectin / PPP1r18 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
矯正歯科治療において効率的な歯の移動を行うには、圧迫側の歯槽骨吸収メカニズムの解明が重要である。矯正的歯の移動で認められる骨吸収は、機械的刺激を感知した骨細胞が産生する RANKL が破骨細胞分化を促すことにより生じる。しかし、機械的刺激に応答した骨細胞の RANKL 発現の分子メカニズムは不明である。申請者らは、アクチン関連因子 plectin と PPP1r18 が、破骨細胞の分化を制御する新規因子であることを報告した。また、機械的刺激が負荷された骨細胞におけるアクチンリモデリングが、RANKL 発現を促す可能性を見出したが、骨細胞におけるアクチンリモデリングを介したRANKL発現の制御メカニズムは不明である。以上の知見から本研究では、機械的刺激により促される骨細胞の RANKL 発現における、 アクチンリモデリングの関与およびその関連分子の解明を行うこととした。 本年度は、昨年度に確立したライブイメージング実験系を用いて、プライマリー骨細胞において、機械的刺激負荷を感知した細胞を選別したうえでアクチンリモデリングを解析した。この実験によりプライマリー骨細胞に機械的刺激を負荷すると、機械的刺激負荷を感知したカルシウム応答陽性細胞においては、アクチンリモデリングと細胞形態の変化を生じることを明らかとした。また、同様の機械的刺激負荷装置を用いることで、機械的刺激負荷によってプライマリー骨細胞のRANKLのmRNA、タンパク質の発現が上昇した。さらに、機械的刺激負荷を受けたプライマリー骨細胞と破骨細胞前駆細胞との共培養実験により、機械的刺激負荷を受けた群では、破骨細胞の分化を促進することを明らかとした。現在、この実験系を用いてさらなるデータ収集および解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度に確立した実験系により、プライマリー骨細胞における機械的刺激負荷下でのライブイメージング実験を行い、プライマリー骨細胞における機械的刺激負荷とアクチンリモデリングの関与を明らかとした。また、機械的刺激負荷を受けたプライマリー骨細胞における、RANKL発現変化と破骨細胞分化についての変化についても明らかとした。一方、新型コロナウイルス感染の蔓延もあり、想定していた実験数を行うことができなかったため、骨細胞におけるアクチンリモデリングを介したRANKL発現への plectin と PPP1r18 の関与についての検討には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究実績を踏まえ、確立した実験系を用いて、骨細胞における機械的刺激負荷とアクチンリモデリングのRANKL発現への関与を、ライブイメージング等にてデータを収集、解析する。また、この実験系を用いて、機械的刺激による plectin と PPP1r18 の発現変化についても解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の結果をもとに、次年度はアクチンリモデリングとRANKL発現変化の関連性、plectinおよびPPP1r18 の発現変化についてデータ収集を行う予定であるため、試薬等の費用がかさむことを鑑みて、本年度使用予定額の一部を次年度に繰り越すこととした。繰り越した助成金も活用することで、次年度計画予定を順調に遂行し、当該課題を実施していく。
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