研究課題/領域番号 |
19K19259
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
和田 奏絵 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80586769)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Developmental defects / 形成不全 / 摩耗 / エナメル質 / レプリカ評価法 / Tooth wear / 乳歯 |
研究実績の概要 |
2020年度は、Developmental defects of enamel(以下、DDE)に罹患したヒト乳歯エナメル質の収集を行い、ヒトエナメル質の対合歯咬頭とエナメル質の咬合接触状態をモデル化して、衝撃的接触と滑走運動の動きを小児口腔を模範し連動させ、DDEに罹患したエナメル質にTooth wearを発生させることに成功した。 生じさせたTooth wearの観察には3D非接触型レーザー顕微鏡とデジタル光学スキャナーを用いてナノレベルでの計測を行った。その摩耗様相からDDEに罹患したエナメル質のTooth wearのメカニズムを解明するという意義にとどまらず、小児歯科の臨床現場において、DDEに関連する酸蝕・咬耗・摩耗などを特徴としたTooth wearの発見の遅れから重篤化することがあるTooth wearの修復法、予防処置の可能性を示唆した。 また、DDEのないヒトエナメル質を対照群として、衝撃滑走摩耗試験を行いTooth wearを生じさせ、発生したTooth wearのエナメル質表面の構造を、セルロースアセテートシート(以下、CARS)を用いてレプリカを採取し、顕微鏡による観察結果を、実物試料の摩耗面と比較し観察した結果、CARSは、表面微小亀裂、摩耗痕、クレーター、摩耗傷、および溝を観察することができ、従来法(石膏模型や特殊な材料を用いてレプリカを作成する)に比べ、非破壊的に簡便で安全に観察することができた。以上の成果は、単にCARSによって簡易にエナメル質表面の摩耗がより詳細に解明されたという意義にとどまらず、今後、DDEの早期発見をする上で、本研究に用いたCARSが臨床応用に有用である可能性を示唆した。これら、Tooth wearのCARSを用いた診査法の調査として論文作成を行い、Bio-Medical Materials and Engineeringに投稿し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の成果から、衝撃滑走摩耗試験を行いTooth wearを発生させ、CARSを用いたTooth wearの診査法についての成果を論文掲載した。ヒト乳歯エナメル質同士のTooth wearがより詳細に解明されたという意義にとどまらず、今後、DDEの早期発見をする上で、本研究に用いたCARSが臨床応用に有用である可能性を確認することができた。 また並行して、ヒトエナメル質のDDEに起因する乳歯の収集し、衝撃的接触と滑走運動の動きを小児口腔を模範し連動させ、咬合接触状態をモデル化して衝撃滑走試験を用いて再現し、DDEに起因したTooth wear表面のナノレベルでの観察を行っている。Tooth wearのメカニズムの解明という意義にとどまらず、DDEに関連する酸蝕・咬耗・摩耗などを特徴としたTooth wearの発見の遅れから重篤化することが多い乳歯の修復法や予防処置の可能性を確認することができ、現段階では現状の実験系で引き続き研究を進めていくことが可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
DDEに罹患した乳歯のTooth wearを観察するため、乳歯の収集を引き続き行い、DDEのない健常乳歯を対照群として、DDEに罹患した乳歯のTooth wearのナノレベルでの構造の特徴を評価し、その様相からメカニズムを解明を行う予定である。観察には非破壊的検査法を用いて、3Dデジタルデータを構築し計測し、更に、デジタル光学スキャナー、実体顕微鏡および走査電子顕微鏡(SEM)でエナメル質小柱やアパタイト結晶の微細構造のTooth wearの広がり方を、DDE罹患群と対照群で比較し、DDEを起因とするTooth wearの進展様相を分析する予定である。 成果を論文としてまとめることを目標とする。更に、国民健康の増進へ寄与度を増すために、これまで欠落していたDDEに罹患した歯に対する臨床的対応に対する直接的情報を提供し、DDEに起因するTooth wearの早期発見と早期予防処置の普及と、DDEに罹患した小児の口腔機能維持ならびに永久歯列の正常な確立を目指し、これまでの研究成果を患者のQOL向上に結び付ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加は 参加予定していた学会がCOVID-19の影響で中止となり旅費等の経費も予定に達しなかった. また、緊急事態宣言で研究の進行に影響が出て、それに付随する支出が抑えられたために当初の所要額に達しなかったと考えられる.
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