研究課題
近年、成長期に鼻呼吸障害を有する子供は増加傾向にあり、成長期における鼻呼吸障害は顎顔面領域の形態や機能に影響を与えるとされている。先行研究より、成長期鼻呼吸障害は咬筋の断面積減少、顎二腹筋のミオシン重鎖の組成変化、咬合力の持続時間が減少を引き起こし咀嚼機能に影響を及ぼすことが報告されている一方で咀嚼運動の制御を司る大脳皮質咀嚼野の発達に与える影響は明らかになっていない。そこで本研究では、成長期鼻呼吸障害が皮質咀嚼野の発達にどのような影響を及ぼすかを電気生理学的手法とモーションキャプチャリングを用いて解明することを試みた。その結果、成長期鼻呼吸障害は経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の有意な低下をもたらし、皮質咀嚼野A-areaの有意な領域拡大、および、皮質咀嚼野P-areaの有意な領域拡大、さらに開口量の減少傾向が明らかになった。一方で、咀嚼運動開始までの潜時に有意な差は認めないことが明らかになった。本成果により、成長期鼻呼吸障害は皮質咀嚼野A-areaとP-areaの発達に変調をもたらし、咀嚼運動の発達に影響を与えることが示され、成長期の鼻呼吸障害は早期に改善すべき重要性が示唆された。本研究から得られる成果は早期矯正歯科治療のガイドラインの一助となりうると考えられる。また、従来の生理学的手法に物体の動きをデジタル的に記録する技術であるモーションキャプチャリングを融合した新たな手法を確立したことで、歯学全般、神経生理学、脳神経学、小児歯科学などの多岐にわたる分野への応用が期待される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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