研究課題
本研究では、4つの課題を設定し、研究を実施している。1つ目、ROCK阻害剤添加下における歯槽骨リモデリングの変化の解析では、ラット矯正学的歯の移動モデルを作成し、上顎骨の組織切片を使用して、破骨細胞および骨芽細胞のマーカーとなる抗体にて免疫組織染色を行い、ROCK阻害剤存在下における歯槽骨周囲の細胞の局在を解析している。2つ目、局所投与と全身の骨代謝変化との関係性の解明では、ROCK阻害剤を局所投与し、採取したラットの血液より骨代謝マーカーを測定することで全身の骨代謝への影響の有無を検証している。また、マイクロCTを使用し、全身の骨密度を経時的に測定する。3つ目、ROCK阻害剤の破骨細胞および骨芽細胞分化促進機序の解明では、ROCK阻害剤が破骨・骨芽細胞内の全遺伝子プロファイルに及ぼす影響 をcDNA マイクロアレイで解析する予定である。また、RNAサンプルのクラスタリング解析によって、ROCK阻害剤が細胞の遺伝子発現に及ぼす影響、SILAC法を使用した定量的プロテミクス解析により薬剤がもつシグナル伝達経路や分化制御因子への影響を解明していく。4つ目 、破骨細胞と骨芽細胞のカップリング因子とROCK阻害剤の関連性について、ROCK阻害剤による破骨細胞分化の促進により、骨芽細胞分化を活性化するカップリング因子の発現も亢進しているかどうかを検証している。また、細胞培養の上清液をサンプルとし電気泳動、ウエスタンブロット法および質量分析法を用いて未知の分泌性カップリング因子の同定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、4つの課題を設定し、研究を実施している。1つ目、ROCK阻害剤添加下における歯槽骨リモデリングの変化の解析では、ラット矯正学的歯の移動モデルを使用するが、モデルの作成は計画通りに進んでいる。上顎骨の組織切片を使用した免疫組織染色では、骨代謝に関連する細胞の染色が確認され、歯槽骨周囲の細胞の局在を観察できている。2つ目、局所投与と全身の骨代謝変化との関係性の解明では、ROCK阻害剤を局所投与したラットの血液サンプルを使用するが、こちらに関してもサンプルを安定して採取できるようになっている。3つ目、ROCK阻害剤の破骨細胞および骨芽細胞分化促進機序の解明については、ROCKタンパク質結合因子の網羅的解析を免疫沈降法と質量分析を組み合わせて行っている。4つ目、カップリング因子とROCK阻害剤の関連性の解析では、骨芽細胞由来のエキソソームに着目し、その単離精製を培養上清から行っている。現在、質量分析によって、未知の分泌性カップリング因子の同定を行っている。
本研究では、in vivo とin vitroに分けて課題を設定し、研究を実施しており、今後も同様に研究を推進していく予定である。In vivo では、ラット矯正学的歯の移動モデルを作成し、上顎骨の組織切片を使用して、ROCK阻害剤添加下における歯槽骨リモデリングの変化を解析する。また、ROCK阻害剤を局所投与したラットの血液を採取し、骨代謝マーカーを測定することで全身の骨代謝への影響の有無を検証する。In vitro では、ROCK阻害剤が破骨・骨芽細胞内の全遺伝子プロファイルに及ぼす影響 を網羅的に解析し、また、ROCK阻害剤のROCK結合因子に対する影響を調べる。さらに、ROCK阻害剤の有無による骨芽細胞培養上清中のエキソソーム由来タンパク質の同定を行い、未知の分泌性カップリング因子を同定する。これによって、破骨細胞と骨芽細胞のカップリング因子とROCK阻害剤の関連性を解明していく予定である。
すべて 2020
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 526 ページ: 547-552
10.1016/j.bbrep.2015.12.011