研究課題/領域番号 |
19K19266
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉田 翔 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40801048)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯周病原菌 / 線毛 / 歯肉上皮細胞 / fimA / 付着侵入 |
研究実績の概要 |
2019年では、歯肉上皮細胞株を用いて P. gulae の付着侵入能ならびにその経路の解析を行った。ヒト歯肉上皮細胞株は Ca9-22 細胞株(歯肉癌由来;JCRB0625)を使用した。P. gulae 線毛遺伝子 A/B/C 各保有株の付着侵入能を比較し、上皮細胞侵入能と P. gulae 線毛遺伝子型との関連性を解明した。その結果A型線毛保有 D066 株が高い付着能を示し、B型線毛保有 D040 株およびC型線毛保有 D049 株が高い侵入能を示すことが明らかとなった。以前に行ったカイコモデル実験において、C型線毛タンパクが高い病原性を示すことが明らかにされており、C型線毛保有株が高い病原性を保有する可能性が示唆された。続いて P. gulae 付着侵入経路を明らかにするために、宿主細胞の特定の機能を抑制する阻害剤(サイトカラシンD、ノコダゾール、スタウロスポリン、シクロヘキサミド、アジ化ナトリウム)を用いた。その結果、宿主細胞のアクチン重合が P. gulae の付着侵入に密接に関与している可能性が示唆された。 現在C型線毛保有 D049 株を用いて P. gulae 線毛欠損株の作製を進めている。D049 株の fimA 遺伝子領域前後の塩基配列の解析が完了しており、フュージョン PCR 法で fimA 遺伝子の欠損部位にエリスロマイシンカセットを挿入する。線毛欠損株を作製後、欠損部位に再び元の fimA 遺伝子を挿入した菌株を作製し、病原性が復元されることを確認する予定である。さらに菌の代謝やプロテアーゼにターゲットを絞り、付着侵入能への影響を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
P. gulae は歯肉上皮細胞の細胞膜に存在するインテグリン α5β1 を介して付着し、その付着能は P. gulae 線毛タイプに影響されることを明らかにした。さらに P. gulae に感染した歯肉上皮細胞において、炎症性サイトカインとメディエーターに関連する mRNA 発現が顕著に増加することが示され、歯肉上皮細胞を用いた研究は順調に進行している。実験方法はすでに確立されており、残る P. gulae の代謝やプロテアーゼにターゲットを絞った付着侵入経路の解析は順調な遂行が期待できる。 一方 P. gulae 線毛欠損株の作製は未完成であるが、D049 株の fimA 遺伝子領域前後の塩基配列の解析はすでに完了している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は P. gulae の代謝やプロテアーゼをターゲットとして、阻害剤(アジ化ナトリウム、クロラムフェニコール、リファンピン、ナリジクス酸、プロテアーゼインヒビター)を用いて付着侵入経路の解析を継続する。 fimA 遺伝子欠損部位にエリスロマイシンカセットを挿入することで線毛欠損株の完成を急ぐ。P. gulae 線毛欠損株の完成後は、当初2020年の目標として掲げたカイコモデルを用いた病原性の評価、歯肉上皮細胞を用いての炎症反応の評価を行う。カイコモデルに P. gulae 線毛遺伝子保有株および線毛欠損株を感染させ、その生存数を測定することで線毛遺伝子が病原性に及ぼす影響を評価する予定である。またヒト歯肉上皮細胞に P. gulae 線毛遺伝子保有株および線毛欠損株を感染させ、リアルタイム PCR を用いて歯肉上皮細胞の炎症関連遺伝子の発現を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
P. gulae 線毛欠損株を作製後は、当初2020年の目標として掲げたカイコモデルを用いた病原性の評価、歯肉上皮細胞を用いての炎症反応の評価を行う。現在線毛欠損株の完成が遅れているため、次年度使用額が生じている。今後は線毛欠損株の完成を急ぎ、続く実験に当該助成金と2020年度分の助成金を使用予定である。
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