動物由来歯周病原菌 Porphyromonas gulae の保有する線毛遺伝子 A/B/C 各保有株の付着侵入能を比較し、ヒト歯肉上皮細胞侵入能と P. gulae 線毛遺伝子型との関連性を検討した。宿主細胞には Ca9-22 細胞株 (歯肉癌由来; JCRB0625) を使用した。その結果すべての菌株は歯肉上皮細胞に付着する一方で、B型線毛保有 D040 株とC型線毛保有 D049 株が侵入能を持つことを明らかにした。そこで本年度は P. gulae の付着侵入経路を明らかにするために、宿主細胞の特定の機能を抑制する阻害剤を用いた。サイトカラシンD により付着ならびに侵入が抑制されたことから、P. gulae の付着・侵入には宿主細胞のアクチン重合が深く関与することが示された。またスタウロスポリンやアジ化ナトリウムにより P. gulae の侵入が抑制されたことから、細胞内のプロテインキナーゼCやエネルギー代謝が菌の細胞内侵入に関与している可能性が示唆された。さらに菌のプロテアーゼも宿主細胞の付着侵入に大きな役割を果たしていることが明らかとなった。 線毛の病原性を明らかにするため、線毛欠損株の作製を行った。線毛遺伝子 (AB679295.1) が解読されているC型線毛保有 D049 株の cDNA をもとにフュージョン PCR 法を用いて、fimA 遺伝子内にエリスロマイシンカセットを挿入した領域を持つプラスミドを作製し、エレクトロポレーションにより D049 菌体内に導入することで fimA 遺伝子変異株とした。これらの線毛欠損株を用いて、今後は引き続き線毛の病原性を解析したいと考えている。
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