本研究は、Rett症候群患児乳歯歯髄より調整した乳歯歯髄由来幹細胞(SHED)からクローニングした正常型MeCP2発現SHEDと異常型MeCP2発現SHEDを活用し、Rett症候群の病因と考えられる神経細胞の発育障害とミトコンドリア機能の関係を解明すると共に、Rett症候群に対する対症療法や根本的治療の為の創薬基盤の開発へ展開することを目的とし、以下の解析を行った。 (1) ミトコンドリア機能活性化因子の補充による神経細胞発育障害の回復とミトコンドリアへの影響の解析:異常型MeCP2発現SHEDに対し既知のミトコンドリア機能活性化因子の補充を行い、補充後に樹状突起伸長・分岐能が回復するかを明らかにするため、β-Tubulin III抗体で細胞免疫染色を行い樹状突起の伸長と分岐数を計測したところ、異常型MeCP2発現神経細胞の発育障害及びミトコンドリア機能障害の回復は見られなかった。この結果は、MeCP2遺伝子の変異が、ミトコンドリア機能活性化因子によるミトコンドリア機能回復を阻害するような遺伝子発現調節を行っていることを示唆している。 (2) MeCP2遺伝子変異によるミトコンドリア機能低下に対する解析:Rett症候群発症に関与するミトコンドリアを制御する新規因子を明らかにするために、ミトコンドリアの数、ミトコンドリアの転写能について解析するため、ミトコンドリアDNA量・tRNA量をqPCRで測定し、現在解析中である。 今後は、さらに複数種類のミトコンドリア機能活性化因子を補充しミトコンドリア機能を活性化できるか、またそれにより神経細胞発育障害が回復するかを判定することで、より詳細なMeCP2遺伝子による遺伝子発現制御とそれに伴うミトコンドリア 機能低下のメカニズムの関連性を明らかにしていく。
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