研究実績の概要 |
本研究は,Porphyromonas属の産生するジペプチジルペプチダーゼ(Dipeptidyl-Peptidase:DPP)が同菌の病原性に寄与しているのではないか?という着想に基づいている.Porphyromonas属は,歯科では歯周病学分野で広く知られている菌であるが,研究者の所属する小児歯科の臨床においても,「小児の急性根尖性歯周炎の起炎菌の1つが同属のPorphyromonas endodontalisである」という報告がある.本研究は,DPPと小児における口腔細菌性疾患との関連を検証することを目的として立案した. 本研究前に我々は,口腔内細菌のうち700菌種がDPPを発現しており,Porphyoromonas属だけでなく歯肉縁下プラーク細菌も発現することを報告していたが,本研究期間において我々はPorphyromonas gingivalisにおいてジペプチジルトランスポーター(Pot)が同菌の生育に最も貢献していることを見出しこれを発表した.これにより同菌におけるDPPの果たす役割の大きさが明らかとなった. 既に我々は,ヒトDPP4が細菌DPP4のオルソログであり,細菌DPP4活性がヒトDPP4阻害剤で阻害されること,インクレチンの分解活性を有することを報告している.これに対し、他3種のDPP5, 7, 11のオルソログはヒトに無く細菌のみが有している.我々は,これら3種のDPPsがヒトの生理活性ペプチドを分解することで,歯周病-全身疾患に関与している可能性を検証するため,本研究において口腔細菌性疾患患者の臨床サンプルを用いて細菌性ペプチダーゼ活性測定および細菌叢解を実施した.次年度は,DPP5, 7, 11の歯周病との関連性についての検討・報告を行い,本研究の総括を予定している.
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