本研究は,我々が発見した歯周病原性細菌Porphyromonas endodontalis ジペプチジルペプチダーゼ(Dipeptidyl-Peptidase:DPP)を基点として,同菌の病原性に関与するジペプチド分解系の全容解明およびその阻害経路確立を目指すことを目的として立案したものである.本研究を起案した際,DPP遺伝子保有菌には,全身疾患との関連が示唆されるものが多数あるため,本研究の成果は,それらの疾患予防・治療法確立への寄与が期待されるとして研究を遂行した. 通常,歯周病原性菌は18歳までに口腔内に定着するとされる.しかし,研究代表者の従事する小児歯科診療においては,同年齢以下でも急性症状を伴う歯周病(急性歯周炎)が散見される.この急性歯周炎に罹患した歯の根管内や根尖病巣部より分離されるのが, P.endodontalisである.同菌は,エネルギー源と炭素源を細胞外のオリゴペプチドに依存しており,また,同菌の近縁種で慢性歯周炎の原因菌P. gingivalisも同様の栄養源を利用している.本研究では最終年度までに,両菌がDPP群を利用し細胞外オリゴペプチドを菌体内へ取り込んでいることを報告済であり(Mol Oral Microbiol.),この成果により,DPPを標的とした歯周疾患等の治療可能性を示してきた. 本研究開始時は,Porphyromonas属がオリゴペプチドを代謝する過程をDPP等の既知のペプチダーゼのみで説明することは困難であったが,我々は,P. gingivalisにおけるDPP7が,既知の概念よりも広く基質特異性を持ち,従来特異性を持たないと考えられていた中性アミノ酸に対しても基質特異性を持つことを見出した.本研究成果は今後学会発表・論文発表を予定している.
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