研究課題/領域番号 |
19K19275
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
今井 治樹 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 指導診療医 (80735837)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顎矯正手術 / メタルアーチファクト / CT |
研究実績の概要 |
顎矯正手術計画の立案に際し、頭部CTに歯列データを統合した複合モデルが利用されているが、このとき問題となるのが口腔内金属によるアーチファクトである。アーチファクトが存在するとCT上の歯列が不明瞭となり、口腔内から採得した歯列データの正確な位置合わせが困難となる。しかしながら、どの程度のアーチファクトであれば大きな精度低下を招くことなく複合モデルを作成可能なのか、その許容範囲については報告がなされておらず判断基準がない。本研究ではこの点に着目し、ファントムの上顎歯列上に装着した金属の数と位置を変化させてCT撮影を行い、メタルアーチファクトに伴うCT・歯列データの位置合わせ誤差について検証を行うこととした。 コロナ禍での研究計画遂行の遅れに伴い、初年度から引き続き被写体に使用するファントムの作製を行った。本ファントムは低粘度エポキシ樹脂にハイドロキシアパタイトとジルコニア粉末を配合することで、エナメル質と歯槽骨のCT値に近似させることが可能である。先行研究では歯牙と歯槽部が一体となっているが、本研究では歯牙を着脱可能なファントムを独自に考案し、作製した。これによりその都度新たなファントムを作製することなく、歯牙の入れ替えにより口腔内金属の分布に様々なバリエーションを与えることが可能となった。なお、各金属製補綴物は金属未装着状態の歯牙と同一形状で作製するため、3Dスキャナーを用いて採得したデータを基に3Dプリンターにてワックスアップを出力し鋳造した。また仰臥位での撮影を想定し、頭蓋に対する咬合平面の角度を再現するよう、ファントムに側方セファログラムの標準値を参考とした角度を付与する台座を装着した。 現在同ファントムを用いたテスト撮影を行っており、順次、ファントムの上顎歯列上に装着した金属の数と位置を変化させて本撮影を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ファントムのデザインの検討や作製に想定以上の時間を要したこと、また新型コロナウイルス感染拡大の影響により研究へのエフォートが予定通り確保できなかったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに金属製補綴物として、前歯および犬歯はレジン前装冠、小臼歯はMODインレー、大臼歯はフルメタルクラウンを準備したが、まずはこれら補綴物の数や分布にバリエーションを与えることで多様なアーチファクトモデルを準備し、それぞれCT撮影を行う。上顎片顎での検討を予定しているが、必要に応じ対合歯にも金属製補綴物を設置し、上下顎での検討を行う可能性もある。 次に、撮影したCTデータを顎矯正用ソフトウエア(ProPlan CMF)にインポートし、アーチファクト体積の算出および、手動操作による除去作業を行った後、3Dスキャナーにて採得した歯列データの位置合わせを行う。この際の位置合わせ誤差を検証するため、コントロールとして、アーチファクトの影響を受けない模型基底部での位置合わせを併せて行う。同ソフトウエアには指定したポイントの三次元的な位置情報をX/Y/Z座標値で表示する機能があり、ポイントの移動に伴って座標値も変化する。本研究ではこれを応用し、歯列データの上顎歯列上に5点のランドマークを設定し、歯列部分での重ね合わせと基底部での重ね合わせの間で座標値のずれを求めることで、位置合わせ誤差を算出し、金属の数・分布と位置合わせ誤差の関係性を明らかにする計画である。 なお研究を遂行する上での課題としては、手動操作によるアーチファクトの除去工程がある。除去の程度により結果にバラつきが生じる可能性があるため、計測を複数回行うことや、アーチファクト軽減ソフトウエアの適応、あるいは最近ではAIによりアーチファクトを自動除去する技術も登場しているため、それらが応用できないか検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況の遅れにより、当該年度に購入可能であった物品の購入に至っていないこと、新型コロナウイルスの影響により参加を予定していた学会がWeb開催に変更となったこと等が挙げられる。翌年度分として請求した助成金と合わせ、画像解析用PCやソフトウエアの購入費および学会参加費、ファントム作製の予備費などとして使用予定である。
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