研究課題/領域番号 |
19K19276
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
中尾 友也 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (90733048)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顎関節 / 関節円板 / 荷重負荷 / 細胞外マトリックス / コラーゲン / 弾性系線維 |
研究実績の概要 |
本申請研究は、機械的刺激に対する顎関節組織の反応特性を検討し、顎関節症、そのなかでも円板の変形を主徴とする顎関節内障の病態変化を解明することである。そのために生力学環境の変化が関節円板の細胞外マトリックス、なかでもコラーゲンと弾性系線維の発現にどのような影響を及ぼすのかについて、組織学的および分子生物学的に解明する。初年度である本年度は本実験系で最重要となる顎関節への荷重負荷実験を実施した。具体的には、下顎頭軟骨の反応性が高いと考えられる生後7週齢のWistar系雄性ラットを用い、顎関節部への荷重負荷を増大させるため、上顎切歯部にレジン製咬合板を装着し、臼歯部を離開させた。各実験期間終了後、トルイジンブルー(TB)染色による組織学的観察とreal-time PCRによるmRNAの発現変化を比較検討した。 その結果、組織学的変化では、実験群の関節円板前方肥厚部で厚径が減少し、後方肥厚部厚径が顕著な増加を示した。中央狭窄部では、対照群と実験群を比較して厚径に変化はなかった。なお、実験群の顎関節部において、炎症所見は観察されなかった。コラーゲンのmRNA発現では、Ⅰ型、Ⅲ型コラーゲンでは増加を示したが、Ⅱ型コラーゲンでは減少を示した。 これらの結果は、咬合改変モデルにより顎関節部への荷重負荷が増大すること、および本実験モデルが関節負荷に対する顎関節の反応を検討する実験系として適していることを示している。さらに成長期ラット関節円板は、関節荷重の増大によって組織学的変化および細胞外マトリックスの組成、特にコラーゲン・弾性系繊維の変化を生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究調書の今年度の研究計画では、(1)下顎頭軟骨への荷重負荷のためのin vivo 実験の実施、(2)組織学的観察、(3)mRNA発現の定量、(4)タンパク質局在と発現定量のための抗体の作製を予定としていた。まず、顎関節への荷重負荷のためのin vivo実験の実施についてだが、咬合挙上を行った実験群において関節円板前方肥厚部厚径の減少と後方肥厚部厚径の顕著な増加の組織学的変化を確認することができた。これらの所見から咬合改変モデルにより顎関節部への荷重負荷が大きくなること、および本実験モデルが関節負荷に対する関節円板の反応を検討する実験系として適していることが確認できた。次にmRNA発現の定量についてだが、本実験では細胞外マトリックス、なかでもコラーゲンと弾性系繊維に着目する予定である。コラーゲンのmRNA発現では、すでに申請者自身Primerを有していたため、Ⅰ型,Ⅲ型コラーゲンでは増加、Ⅱ型コラーゲンでは減少という結果を得ることができた。しかし、弾性系繊維に関してはPrimer設計からの実施であったため、まだ定量には至っていない。すでにPrimerは完成しており、mRNA発現定量のための資料作製も終了しており、今後定量を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策としては、進捗の遅れている弾性系繊維のmRNA発現の定量を実施すること、加えてコラーゲン・弾性系繊維のmRNA発現の認められたタンパク質発現の定量をWestern blotting法を用いて行う予定である。また、現在では関節円板全体におけるmRNAの定量のみしか実施していないが、レーザーマイクロダイセクション法を用いた各領域におけるmRNA発現および遺伝子組織化学染色によるmRNAの局在の観察も検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究調書に記した今年度の研究計画と比較し、現在の進捗状況は多少遅れている。そのため今年度行うはずであった研究計画の中で実施できていないものが存在し、その分が当該助成金である。
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