本研究は、機械的刺激に対する顎関節組織の反応特性を検討し、顎関節症、そのなかでも円板の変形を主徴とする顎関節内障の病態変化を解明することである。 そのために生力学環境の変化が関節円板のコラーゲンと弾性系線維の発現にどのような影響を及ぼすのかについて、in vivo実験とin vitro実験を用いて組織学的および分子生物学的に解明することを目的としている。まず、咬合改変モデル(切歯部咬合挙上板)によるin vivo実験において、顎関節への荷重負荷実験を実施した。その結果、組織学的変化では、関節円板の形態変化を認め、特に円板後方肥厚部における形態変化が顕著で、強いメタクロマジーを認めた。コラーゲンのmRNA発現では、I型、III型コラーゲンは増加を示したが、II型コラーゲンでは減少を示した。一方、ラット関節円板からアウトグロース法にて単離した関節円板培養細胞に伸展刺激を加えるin vitro実験も実施し、コラーゲンおよび弾性線維のmRNA発現を比較検討した。その結果、versican、aggrecan、fibromodulin、I型コラーゲンは増加し、Lumican、decorin、Tropoelastin、III型コラーゲン では減少した。 これらの結果から、咬合改変モデルにより顎関節部への荷重負荷が増大することが示され、in vivoとin vitro実験により関節円板は、機械的刺激の増大によっ 組織学的変化および細胞外マトリックスの組成、特にコラーゲン・弾性線維の変化を生じることが明らかとなった。
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