【Introduction】審美性や金属アレルギーなどの観点から、金属ワイヤーに代わる材料が現在までさまざま検討されている。例えば、透明な樹脂や複合材料もその中の一つである。樹脂の中でも機械的強度に優れるPEEK (poly-ether-ether-ketone) 樹脂に着目し、PEEK樹脂製ワイヤーの3点曲げ試験、応力緩和試験、摩擦試験、およびぬれ性試験を行い、矯正用ワイヤーとして使用可能であることを報告した。【Objective】しかし、ワイヤーとしては強度が弱いためPEEKの複合材料を用いることにより、矯正用ワイヤーとして使用可能かどうかの特性評価を行った。【Methods】適宜削合したガラス繊維強化PEEK樹脂(以下GF-PEEK)を用いた。対照群としてNi-Ti合金 (0.016inch丸ワイヤー (以下Ni-Ti)(G&H)) 、0.016inch丸ワイヤー、0.016×0.022inch角ワイヤー、0.019×0.025inch角ワイヤーの3種類のナチュラルグレードのPEEK樹脂ワイヤー (HOTTY POLYMER)を使用した。試作3点曲げ試験機で、荷重-たわみ特性を測定した。【Results】GF-PEEK樹脂ワイヤーの荷重-たわみ曲線は、ナチュラルグレードのPEEK樹脂ワイヤーやNi-Tiワイヤーと類似した形状を示した。また、Ni-Tiワイヤーと同程度の最大荷重が得られた。【Conclusions】GF-PEEK樹脂ワイヤーは、引張強度、引張弾性率が高いにも関わらず、ナチュラルグレードのPEEK樹脂ワイヤーと同程度の曲げ特性を示し、強度のあるワイヤーとして金属ワイヤーの代替材料に使用できる可能性が示唆された。
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