研究実績の概要 |
必要なときにはがすことができる歯科矯正用接着材の開発に向け、2019年度は(1)温度応答性ポリマーの作製、(2)温度応答性ポリマーの歯科矯正用接着材への添加を行った。 (1)の温度応答性ポリマーの作製についてはN-イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコールに架橋剤としてN-N’メチレンビスアクリルアミドを加え、過硫酸アンモニウム、N,N,N’,N’-テトラメチレンジアミンを重合開始剤として用いることで重合し、ゲルを作製した。得られたゲルは加温することで、透明から不透明に変化し、体積が収縮することから温度応答性を持つことが確認できた。 (2)の温度応答性ポリマーの歯科矯正用接着材への添加については、得られた温度応答性ポリマーを凍結乾燥し、粉砕することで粉体とし、歯科矯正用接着材のポリマー粉末に添加した。歯科矯正用接着材にはmethyl methacrylate系歯科矯正用接着材を用い、添加量は10%とした。得られた温度応答性ポリマーを添加した歯科矯正用接着材のポリマーを用いてメーカー指定の方法で重合し、直径6mm、高さ10mmの円柱状の試験片を作製した。得られた試験片を用いて圧縮試験を行い温度応答性ポリマーを添加していないmethyl methacrylate系歯科矯正用接着材と比較したところ、ほぼ同等の圧縮強さをもつことがわかった。この結果より添加量が10%までであれば機械的強度にほぼ影響がでないことが予測され、物性を低下させることなく、新規歯科矯正用接着材を得ることができた。
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