矯正歯科治療において矯正力が負荷されると、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成により歯が移動する。矯正力による歯の移動は、骨細胞が機械的刺激を感知し、破骨細胞や骨芽細胞の機能を制御して生じているが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究では、マウスを用いた実験的歯の移動モデルおよび培養骨細胞を用いて、機械的刺激下における骨細胞を介した骨吸収の分子メカニズムの解明を目的とする。 本年度は、圧縮力負荷時における骨細胞のアポトーシスの関与を検討する目的で、6週齢の雄性ICRマウスの頭蓋冠に圧縮力を付加した。頭頂骨を露出させ、頭頂骨に穴を開け、矢状縫合部を跨ぐようにして矢状縫合部に対し垂直な面の水平方向に0.2Nの圧縮力が付加されるようにスプリングを挿入した。対照群にはスプリングは挿入しなかった。0、3、6時間の圧縮力負荷後、全身麻酔下で 4%パラホルムアルデヒドにて灌流固定を行った。頭蓋骨を摘出後、通法に従い脱灰、脱水処理を行い、パラフィン包埋ののち厚さ5μmの水平断連続切片を作成した。得られた組織切片を用いてアポトーシス細胞を同定するためにTUNEL染色を行い、連続切片を用いてp53に対する免疫染色 を行った。その結果、p53のタンパク質発現量は、圧縮力負荷3時間後に対照群と比べ有意に上昇し、TUNEL染色における陽性細胞の割合は圧縮力負荷6時間後 に対照群と比べ有意に上昇した。さらに、骨細胞様細胞MLO-Y4をシリコンチャンバーに播種後、生化学用細胞伸展装置を用いてMLO-Y4に圧縮力を負荷し、in vitroにおける骨細胞への圧縮力負荷モデルを確立できた。
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