先天異常をもつ患者の治療計画立案にあたり、疾患に対する診断を下すことは、患者の成長のみならず、予後の予測という観点からも大変重要である。しかしながら臨床においては、技術的制約から分子遺伝学的検査による確定診断は導入が進んおらず、臨床所見のみにより診断を行っている場合が多くを占めていた。本研究では、顎顔面領域に形態異常をきたす先天異常症候群の原因遺伝子を候補遺伝子とした上で、網羅的に解析できるシステムを構築し、その有効性を検証する。併せて対象者の臨床所見との相関を検討し、今後の矯正歯科診断時に必要な根拠を創出することを目的とした。 今年度は、これまでに選定した顎顔面領域に形態異常を引き起こす先天異常症候群について、臨床的特徴について、さらなる分析を行なった。特に昨年度までに新規に矯正歯科治療を希望し来院し、矯正学的検査を実施したマルファン症候群患者について、症例数をさらに増やし、口腔顎顔面領域についての特徴の分析し、過去の文献報告や症例報告との比較分析を行った。合わせて、すでに他科にて分子遺伝学的検索を行なっている症例について、遺伝子型と表現型の関連について調べた。分析した内容を精査し、日本口蓋裂学会にて学会発表を行った上で、論文の作成を行っており、成果を外部発表する予定となっている。
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