研究課題
顎顔面の発生には、様々な顔面突起の適切な成長および癒合が必要不可欠である。異常な顔面突起の成長や癒合、骨形成の異常は、顎顔面形成不全の原因となり、その中でも口唇口蓋裂は人間の顎顔面領域で生じる最も一般的な先天性疾患である。Rdh10遺伝子が制御する顎顔面領域のレチノイン酸(RA)シグナルが顔面正中部の癒合における分子基盤であることが示唆されることに着目し、本研究では、Rdh10遺伝子を機能阻害したマウスの形態および組織学的表現型を詳細に解析し、正中顔面裂および切歯の形成異常の発症に関連するRAシグナルの機能解明を行うことを目的とした。胎生初期および神経堤細胞特異的にRdh10遺伝子の機能を阻害したマウスを用いて実験を行った。胎生初期にRdh10遺伝子の機能を阻害することで、発生中の前頭鼻突起におけるRAシグナルの実質的な低下をもたらし、その結果、正中顔面裂や切歯の形成異常といった様々な顎顔面領域の異常が生じることを示した。Rdh10遺伝子の機能を阻害したマウスで生じる正中顔面裂は、発生中の前頭鼻突起内における、頭部神経堤細胞でのアポトーシスの増加やAlx1およびAlx3転写の実質的な減少が関連していた。Shhシグナルの制御を誤ると、顔面正中部の形成異常に関与するRAシグナルの低下を引き起こす原因となることが示された。以上より、正常な顔面正中部の発生には、胎生初期特異的および前頭鼻突起での部位特異的なRdh10遺伝子とRAシグナルが重要な機能を果たし、また、分子および細胞レベルでの調整が必要不可欠であることが明らかとなった。本研究を発展させていくことで、上記疾患に対するさらなる基礎的な理解が深まり、RAシグナル異常により誘発される顎顔面形成異常の予防法や治療法の確立に貢献することが期待できる。
すべて 2021
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Journal of Dental Research
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