研究課題
口蓋は胎生期に左右の口蓋突起が癒合して形成されるが、このプロセスが障害されると口蓋裂が生じる。癒合前の口蓋突起は上皮で覆われており、癒合後に間葉組織の連続性を経て口蓋を形成する為には癒合部の上皮が取り除かれなければならない。この上皮が消失する細胞機構について、上皮特異的にGFPを発現するマウス (K14-GFPマウス)を用いて口蓋癒合時の上皮の細胞動態を観察するライブイメージング手法を開発している。これまで、口蓋突起の癒合予定部位の上皮の消失は口蓋突起に挟まれた組織の深部で生じるため、ライブイメージによる観察は技術的に困難であった。しかし、申請者らが確立した口蓋突起上皮のライブイメージング技術により観察可能となった口蓋突起癒合不全時の口蓋上皮癒合面における細胞動態を明らかにしようという初めての試みである。本研究初年度は、二次口蓋前方部癒合に関与するRunx1-Stat3-Tgfb3シグナルネットワークにおいてStat3阻害薬、Tgfb3阻害薬を用いて上記の実験条件下で二次口蓋の上皮除去が阻害されることを見出した。E14.5の培養開始から二次口蓋の上皮除去予定領域にGFP陽性の上皮細胞の移動が生じず、GFP陰性の口蓋間葉組織が露出する事も認められなかった。上記阻害薬使用下で口蓋突起癒合面における上皮細胞の動態を評価し、野生型マウスの解析データと比較する。これにより、口蓋突起癒合不全において口蓋突起癒合面の上皮細胞の動態がどのように変化するのかが明らかになる。今後口蓋上皮癒合面の細胞動態の異常を改善することが可能になれば、発症原因が多様な口蓋裂に対して非常に効率的・効果的な治療が可能になると推察される。
3: やや遅れている
計画書では本年度においてK14-Cre/Runx1fl/fl:K14-GFPマウス (K14-GFP口蓋裂マウス)を作製する予定であったが、K14-Cre/Runx1fl/flを作製する段階で停滞し、K14-GFP口蓋裂マウス作製までは至っていない。ただし、Stat3阻害薬、Tgfb3阻害薬を用いた上述の実験系を確立した為、二次口蓋癒合部の上皮細胞と間葉細胞を分子的に解析し、細胞移動のみならず上皮間葉転換も焦点を当てて細胞メカニズムを解明する。また、K14-GFP口蓋裂マウスの作製も平行して遂行していく予定である
本年度は二次口蓋癒合部における遺伝子発現解析等を行う事により上皮細胞移動の分子機構についても明らかにする。また阻害薬使用条件下において、細胞移動が認められなかった癒合面の細胞分離を行い、単一細胞レベルでの解析を行い、新たな分子及び細胞学的メカニズムを解明する。今後細胞接着や遊走といった細胞動態の制御に関わることが明らかになっている化合物を選定し、ライブイメージングを行うことで、細胞動態の異常が改善される薬剤を同定する予定である。
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Frontiers in Physiology
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