申請者はこれまでに、同意の得られた先天性部分無歯症患者(症例群)と、永久歯の先天性欠如のない患者(対照群)を対象として血液試料を採取し、全遺伝子のエクソン解析を行うことで症例群特異的な変異を探索してきた。これらの解析から2021年度には、カリウムチャネルの遺伝子をコードするKCNK15に症例群特異的な3か所の変異を同定した。次いで、ヒト由来のKCNK15をクローニングし、変異を導入したベクターを象牙芽細胞で発現させることで、細胞の基質産生や細胞内外のイオンバランスの変化を確認している。また、これまでに偽性低アルデステロン症の原因遺伝子であるWNK1、低分子Gタンパク質をコードするRAB38など、複数の遺伝子変異を同定している。象牙芽細胞でのノックダウンに用いるsiRNAの作製、変異を導入したベクターの調整を進めている。 また、症例群特異的な変異を有するこれらの遺伝子について、proximity ligation assay(PLA)を用いた局在の確認を行っている。PLAを用いたタンパク質の局在については、その手法について検証し、2022年に国際誌であるMethods Mol Biol.に掲載された(in Press)。また、同意の得られた患者から引続き試料を提供して頂き、2021年度はさらに3症例の全エクソン解析を行った。特に先天欠如歯数が多い症例や家族性の表現型を示す症例に対して解析を継続し、新たな遺伝子変異の探索やこれまでに同定した変異の特異性を確認している。さらに、本研究に伴って調査した岡山大学病院における先天欠如歯の状況について、歯種別や特殊疾患との関係を調査し、2021年に国内の論文に掲載された。
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