研究課題/領域番号 |
19K19295
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中條 真奈 (橋本真奈) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (80824581)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | FIB-SEM / 歯根膜線維 / 歯槽骨 |
研究実績の概要 |
歯科矯正力による歯槽骨改造の解明には、歯槽骨内においてコラーゲン線維を主とする基質成分と、細胞成分との相互作用を解明することが重要である。本研究では当初、数十ナノサイズの高い解像度をもちながら数十マイクロサイズの観察範囲をもつ、直交配置型FIB-SEMを用いて歯科矯正力を付与したマウス歯槽骨の三次元観察を行うことを予定していたが、直交配置型FIB-SEMと同程度の解像度を保ちながら、さらに広範囲領域の観察が可能なキセノンプラズマFIB-SEMを用いることで、より詳細に歯槽骨改造を解明することを計画している。 本年の研究成果により、電子染色や観察条件のさらなる改良を重ねたことで、キセノンプラズマFIB-SEMを用いたマウス歯槽骨の安定的な観察が可能となり、X=218.4 μm、Y=127.4 μm、Z=76.9 μmの領域を50 nm/voxelの解像度で観察することに成功した。次にキセノンプラズマFIB-SEMで撮影した連続画像の解析を試みたが、膨大なデータ量からの手動抽出は数か月単位の時間を要すること、また手動抽出では組織抽出を行う観察者間の能力差やエラーにより結果が左右される可能性があることから、手動抽出ではなく、深層学習などの人工知能を応用することのできるソフトウェアを使用することとした。これによりX=51.4 μm、Y=78.9 μm、Z=10.0 μmの領域の歯根膜線維を抽出し、三次元観察することに成功した。この結果、歯根膜線維が歯のセメント質から歯槽骨に向けて一定の規則性を持って互いに分岐、吻合を繰り返しながら走行している様子が三次元的に観察できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は直交配置型FIB-SEMを使用する予定であったが、キセノンプラズマFIB-SEMを使用することとし、それに伴う染色条件や観察条件の検討に時間がかかったことから進捗はやや遅れているとしたが、観察に関する条件設定は完了したため、今後は観察サンプル数を増やし、同時に解析も行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
キセノンプラズマFIB-SEMを用いたマウス歯槽骨の観察を進めながら、同時に解析を行う予定である。なお、当初予定していたAmiraソフトウェアを用いた手動抽出による解析は膨大なデータ量の処理が困難であることから、今後は深層学習など人工知能を応用した解析が可能なソフトウェアを使用することとする。解析に関してはソフトウェア担当者と主にオンラインで連携を図りながら行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス拡大により多発域への移動が困難となったこともあり、サンプル観察が思うように進まず研究期間を延長しているが、当該年度ではサンプル観察や解析に際して、オンラインでの打ち合わせが可能となったことから、旅費や人件費が当初より少なくなり次年度使用額が生じた。次年度ではサンプル観察を進めていく上での物品費や学会参加の旅費などに研究費を使用する予定である。
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