研究課題/領域番号 |
19K19296
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 多栄子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 研究員 (10823198)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アセトアミノフェン / hDPC / COX / IL-1β / TNF-α / RANKL / M-CSF |
研究実績の概要 |
本研究では、実験的歯の移動モデルに対してアセトアミノフェンがどのようなメカニズムにおいて影響を与えるのか分子生物学的・組織学的に解明するため、2019年度においては以下の研究を行った。 機械的伸展刺激存在下におけるアセトアミノフェンの hDPC に及ぼす影響について、機械的伸展刺激を開始する直前に、10 および100 μMのアセトアミノフェンを添加しFlexer Strain Unitを用い10kPaの陰圧を30サイクル/分の周期で48 時間負荷し、細胞及び上清を回収後、Cyclooxygenase(COX)-1,2、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)、破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF) の発現レベルを定量PCRを用いた遺伝子解析をするとともに、ELISA を用いた各タンパク質の定量解析を行った。 その結果、遺伝子解析において10 および100 μMのアセトアミノフェンを添加した群では添加しなかった群と比較し、COX-1,2、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)、破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF)の発現は有意に抑制された。また、ELISA を用いた各タンパク質の定量解析も同様に10 および100 μMのアセトアミノフェンを添加した群で各タンパク質の発現が有意に抑制された。機械的伸展刺激存在下におけるアセトアミノフェン のhDPCの影響について、抗炎症効果があると示されたことにより、根尖部歯髄組織における炎症反応に対するアセトアミノフェンの抗炎症効果を検討する道筋が明確した。今回の結果については、2020年10月インドネシアで開催される広島カンファレンスにて学会発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械的伸展刺激存在下におけるアセトアミノフェンの hDPC に及ぼす影響についての結果が得られ、概ね順調に進んでおり、圧迫力負荷刺激存在下における hDPC の代謝に及ぼす影響については、資材購入後、圧迫力負荷刺激存在下における hDPC の代謝について、COX-1,2、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)、破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF) の発現レベルを定量PCRを用いた遺伝子解析およびELISA を用いた各タンパク質の定量解析の検討を速やかに行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
圧迫力負荷刺激存在下における hDPC の代謝に及ぼす影響についてin vitroの実験を進めるとともに、アセトアミノフェン投与が実験的歯の移動時における歯根吸収に及ぼす影響についてin vivoの実験を行っていく。 具体的には、実験的歯の移動距離および歯根吸収量をマイクロCT (SkyScan1176-HT)による三次元的な解析を行い、比較・検討する。さらに、歯根吸収量についても同様のCTを用いて三次元的な解析と定量評価を行う。 また、組織学的検討としてCOX-1,2の発現と炎症性サイトカイン (IL-1β、TNF-α)および破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF)の発現について免疫組織化学染色を用いて評価する。また、H-E染色と酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP) 染色を用いて、歯根に出現する破歯細胞数について解析を行う。また、過度な矯正力が歯肉溝滲出液中の破歯細胞制御因子に及ぼす影響について蛋白発現を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
圧迫力負荷刺激存在下におけるアセトアミノフェン の hDPC に及ぼす影響について検討を行うための実験資材の購入額が残っている状況である。資材購入後、圧迫力負荷刺激存在下における hDPC の代謝について、COX-1,2、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)、破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF) の発現レベルを定量PCRを用いた遺伝子解析およびELISA を用いた各タンパク質の定量解析の検討を速やかに行う予定である。また同時にアセトアミノフェン投与が実験的歯の移動時における歯根吸収に及ぼす影響についてin vivoの実験を行っていく。
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