研究実績の概要 |
本研究では、実験的歯の移動モデルに対してアセトアミノフェンがどのようなメカニズムにおいて影響を与えるのか分子生物学的・組織学的に解明するため、分子生物学的検討として、機械的伸展刺激存在下におけるアセトアミノフェンの hDPC に及ぼす影響について、Cyclooxygenase(COX)-1,2の発現、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)、破骨細胞分化因子(RANKL、M-CSF)の発現レベルを定量PCRを用いた遺伝子解析をするとともに、ELISA を用いた各タンパク質の定量解析を行った。その結果、遺伝子解析においてアセトアミノフェンを添加した群では添加しなかった群と比較し、COX-1,2の発現、IL-1β、TNF-α、RANKL、M-CSFの発現は有意に抑制された。また、ELISA を用いた各タンパク質の定量解析も同様にアセトアミノフェンを添加した群で各タンパク質の発現が有意に抑制された。 また組織学的検討として、IL-1β、TNF-α、RANKLおよびM-CSFの発現について免疫組織化学染色を用いて評価した結果、歯の移動を伴いアセトアミノフェンの投与を行わなかった群では歯根中央部および歯冠部の歯髄組織をのぞく根尖部周囲にそれぞれの発現が認められたが、歯の移動を伴いアセトアミノフェンの投与を行った群ではIL-1β、TNF-α、RANKL およびM-CSF の発現はほとんど観察されなかった。このことより、実験的歯の移動時の根尖部歯髄組織におけるIL-1β、TNF-α、RANKL、M-CSFの発現は、アセトアミノフェンの投与により抑制が認められた。 以上のことより、アセトアミノフェンの投与により、歯の移動中の過度な炎症に対して歯根吸収を軽減できる可能性が示唆された。
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