研究課題/領域番号 |
19K19301
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
品川 令 明海大学, 歯学部, 助教 (90818296)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 再生医療 / 唇顎口蓋裂 / 臍帯由来間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
唇顎口蓋裂児の顎裂は、口腔の形態と機能の異常の原因となる。歯肉骨膜形成術(gingivoperiosteoplasty: GPP)は、主に乳児期に顎裂部を両側の骨膜弁により被覆し、骨架橋形成を促すことを目的に行われる外科手術である。GPPによる歯槽堤の連続性の獲得は、口腔機能の正常な発達や、顎裂への舌の侵入防止を、顎裂部二次骨移植が行われる時期より早期に実現することができる。しかしながら、顎裂部を三次元的に評価したところ、骨形成量が不十分な例もあった。現在GPPと共に患児由来の骨髄を移植することで、その成績向上を図っている。しかし、GPP施行時における骨髄移植を目的とした骨髄液採取は、患児への外科的侵襲が大きい。そこで、骨髄液とは異なり、その採取がきわめて容易で、患児や母体に対する侵襲性もないヒト臍帯由来間葉系幹細胞(human umbilical cord mesenchymal stem cells: hUCMSCs)に着目した。ハイドロキシアパタイトとコラーゲンの複合体から成る担体にhUCMSCsを播種し、歯槽骨欠損モデルラットへ移植した。マイクロCTおよび組織染色により骨形成の評価を行ったところ、担体単独に比べてhUCMSCsを加えた移植は骨形成量を増加させた。新生骨周囲にはオステオポンチン陽性の骨芽細胞様細胞が集積し、ヒト特異的ミトコンドリア陽性細胞も観察された。以上より、hUCMSCsは骨組織誘導能を持ち、顎裂部骨再生の有用なバイオリソースであると考えられた。今後は、他種の動物由来の成分を含まない細胞培養法を用いて、将来的な臨床応用に向けたより安全かつ実践的な基礎技術の確立を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来のウシ胎仔血清(fetal bovine serum: FBS)含有培養液を使用した細胞培養法においては、in vitro、in vivo共に安定した結果が得られた。しかしながら、異種成分を含まない(ゼノフリー)無血清培養液を使用した細胞培養系では結果が安定せず、至適な細胞分離・培養条件の検討に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きヒト間葉系幹細胞用ゼノフリー培養液での細胞培養を行い、in vitroにおいて、細胞増殖能、多分化能、MSC関連マーカー/遺伝子発現等の幹細胞特性を比較解析し、移植に有用なhUCMSCsを効率よく得るための至適な細胞分離・培養条件を検討する。FBS含有培養液での細胞培養と比較して細胞数が十分に得られない場合は、移植実験に用いるモデル動物をより小型の動物(マウス)に変更して実験を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト間葉系幹細胞用ゼノフリー培養液での至適な細胞培養条件の決定に遅れが生じており、次年度へ引継ぎとなったため次年度使用額が生じた。また、次年度はin vitroにおける、細胞増殖能、多分化能、MSC関連マーカー/遺伝子発現等の幹細胞特性解析に加え、歯槽骨欠損モデル動物への細胞移植による骨形成能評価に必要な試薬類や実験動物の購入を計画している。
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