乳歯列期における唇顎口蓋裂の顎顔面形態を詳細に分析し、さらに裂型別に比較した報告は認められない。本研究では、乳歯列期における唇顎口蓋裂を片側性唇顎裂、片側性唇顎口蓋裂、および両側性唇顎口蓋裂といった異なる裂型の唇顎口蓋裂間に存在する顎顔面形態の特徴および差異を明らかにするため、cone-beam computed tomography (CBCT)画像を用いて、顎顔面領域における形態解析を行った。 昭和大学歯科病院矯正歯科を受診した、非症候性唇顎口蓋裂患児と先天性疾患や全身疾患を伴わない患児の中から、84名(平均年齢4.66±0.47歳、男児46人、女児38人)を選択し、両側性唇顎口蓋裂群、片側性唇顎裂群、片側性唇顎口蓋裂群、および唇顎口蓋裂を伴わないControl群の4つの群に分類した。CBCTを用いて下顎骨体積の計測と顎顔面の角度・線計測(計9項目)を行い、下顎骨体積および顎顔面形態の比較を行った。統計的検定には、共分散分析とBonferroni法を用いた。 共分散分析の結果から、各群において下顎骨体積に有意差は認められなかったが、角度・線計測を行った5項目(SNA、ANB、SN-MP、Co-A、Go-Gn)に有意差を認めた。さらに、Bonferroni法を用いた多重比較検定の結果から、片側性唇顎裂群と片側性唇顎口蓋裂群間、片側性唇顎口蓋裂群と両側性唇顎口蓋裂群間、片側性唇顎裂群と両側性唇顎口蓋裂群間、および両側性唇顎口蓋裂群とControl群間に、形態学的有意差を認め、その成果は、矯正歯科分野における海外学術雑誌に掲載された。一方で遺伝子解析に関しては、予定通りの対象者数のサンプル収集に苦慮し、進捗が大幅に遅れてしまった。
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