Molar Incisor Hypomineralization(MIH)や Molar Incisor Malformation(MIM)は、第一大臼歯、切歯といった特定の歯種に限局した形成異常を生じる。しかしながら、これらの原因はいまだ明らかになっておらず、MIHやMIMといった形成異常を呈する歯は、成長発達期である小児においては健全な口腔機能の獲得に不利となる。本研究では培養細胞と実験動物を用いて、MIHとMIMの発症原因を遺伝的因子と環境因子の両方向から探索し、歯の形成への影響を検証し、特定の歯種に限局して形成異常が生じる原因解明を目的としている。 最終年度は昨年度に引き続き、ICRマウスにプレドニゾロン(PSL)を皮下投与し、サンプリング後、歯の薄切標本を作製した。RNAscopeおよび免疫染色により、象牙芽細胞分化マーカー(DSPP、DMP1)等の発現解析を行ったが、コントロール群と比較して、PSL投与群では明らかな変化は認められなかった。マウス歯乳頭由来細胞株(mDP細胞株)を用いて、骨分化誘導培地にPSLを添加し、7、14、および21日間、培養を行い、アリザリンレッドS染色による石灰化を評価した結果、コントロール群と比較してPSL添加群では石灰化の亢進が明らかとなった。 本研究において、MIMと診断された歯を用いて、MIMに現れる歯髄腔の異所性石灰化を確認し、その特徴を組織学的解析により明らかにした。また、一連のin vitroの結果を踏まえ、MIMの異所性石灰化の原因として、第一大臼歯、切歯の形成期の環境因子が関与している可能性が示唆された。
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