研究実績の概要 |
解析について再考した後、縦断データを用いて、ベジファーストとう蝕との関連を検証した。2015年度の時点で足立区の小学校へ通う小学1年生であった児童を対象とし、2015年度(小学1年生)および2018年度(小学4年生)時点でのデータを用いた。2018年度の永久歯う蝕(DMFT)の本数を目的変数、2015年度のベジファースト習慣の有無を説明変数、幼稚園の種別、児童の性別、出生順位、親の配偶者の有無、母親の教育歴、世帯所得を調整因子として設定し、ポアソン回帰分析を実施した。また、ベースライン時に永久歯う蝕があった児童、目的変数、説明変数および子どもの性別に欠損があった児童は除外した。 除外基準をクリアしたデータ3,356名(男児:1,699名、女児:1,657名)を解析対象とした。2015年度にベジファースト習慣がある者(ベジファースト群)の割合は12%であった。2018年度の時点で12%が永久歯う蝕に罹患していた。ベジファースト群は、非ベジファースト群に比べ、統計学的有意に2018年度の永久歯う蝕罹患の割合が少なかった(p=0.005)。また、男児に比べて女児の方がベジファースト群は多く、母親の教育歴が高い方がベジファースト群が多い結果が示された(p<0.05)。多変量ポアソン回帰分析の結果、社会経済状態等の全ての因子を調整した上でも、統計学的有意にベジファースト群の方が、非ベジファースト群に比べて小学4年生の永久歯う蝕の本数が少ない傾向が示された(DMFTの本数:PR (95%CI)= 0.67 (0.51-0.89))。本研究より、ベジファースト習慣があることで、親の教育歴や収入のような社会経済的状態を考慮しても、子どものう蝕を減らす可能性が示さた。よって、ベジファーストは親の社会経済的状態により左右されてしまう、幼少期のう蝕格差の是正に貢献することが期待される。
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