研究実績の概要 |
う蝕は最も一般的な疾患であり、世界的に深刻な問題となっている。食事から野菜を食べる習慣(ベジファースト)は、野菜の摂取量を自然に増やすため、う蝕を予防する可能性がある。本研究では、日本人の小学生を対象とした縦断的コホートを用いて、ベジファースト習慣が子どもの永久歯う蝕に及ぼす影響について検討した。 2022年度は最終的な解析の見直しと論文作成に従事した(現在、論文投稿中)。昨年度結合した縦断データを用いて、再度、欠損値の確認と解析方法の見直しを実施した。結果を以下に示す。 東京都足立区の小学1年生全員を対象とした人口ベースの前向き研究「Adachi Child Health Impact of Living Difficulty(A-CHILD)」のデータを用いた。う蝕本数は小学校で実施された歯科健診のデータをリンクして使用した。2015年(小学1年生)のベジファースト習慣の有無と、永久歯が生え始める2018年(小学4年生)の永久歯う蝕の有無との関連についてポアソン回帰分析にて検証した。共変量として、子どもの性別、就学前教育の種類、親の婚姻状況、子どもの出生順位、世帯収入、母親の学歴を用いた。なお、小学1年生の時点で永久歯にう蝕がある者は除外した。3,223名のうち、小学1年生でベジファースト習慣がある者は384名(11.9%)であった。小学4年生における永久歯のう蝕の発生率は、ベジファースト群では30名(7.8%)、非ベジファースト群では360名(12.7%)であった。小学1年生でベジファースト習慣がある者は、その習慣がない者に比べて、う蝕になる確率が低かった(IRR=0.71(95%信頼区間、0.53-0.93)、p=0.015)。永久歯が生え始める小学1年生からベジファースト習慣を持つことは、子どもの永久歯う蝕を予防する可能性がある。
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