研究課題/領域番号 |
19K19312
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅井 啓太 京都大学, 医学研究科, 助教 (10646376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会経済因子 / 喪失歯数 / 教育歴 / 口腔清掃習慣 |
研究実績の概要 |
近年、学歴の低下が歯の喪失に関連していることを示唆する報告が増えつつある。本研究の目的は、喪失歯数に対する教育歴の直接的な影響と、教育歴が喪失歯数に影響を及ぼす行動因子を含めたメカニズムを探索することであった。 方法:横断的なデータは、一般的な日本人集団9,647人より収集された。教育歴は、教育年数に応じて、3つのレベル(≦9年、≦12年、>12年)に分類された。歯の喪失に繋がる行動因子として、歯磨き回数/日、望ましくない食習慣(眠前2時間前の食事、夕食後の間食)、歯科受診頻度(歯周病治療、齲蝕治療)を考慮した。 教育歴を説明変数とし、アウトカムを喪失歯数とした多変量解析(poisson分布をリンク関数とした一般化線形回帰モデル)を行った。調整因子は、年齢、性別、BMI、ブリンクマン指数、糖尿病、抑うつ傾向、世帯年収、同居配偶者の有無とした。p<0.05を統計学的有意とした。 結果:多変量解析(Model 1)では、教育歴は、歯の喪失の独立した決定要因であることが明らかになった。Model 1の調整因子にさらに行動因子を加えた多変量解析(Model 2)では、教育歴の推定値はやや減少したものの殆ど変化せず有意な関連が残った。 結論:一般集団における現在の調査結果は、教育歴と喪失歯数の間に独立した関連を示唆している。また、そのメカニズムに関して、現在の行動習慣のみではなくライフスパンを通した様々な因子を考慮する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究の目的は、口腔の健康格差が、社会経済因子にともなう健康リテラシー行動をどの様に介して全身疾患に結びついているかを、約1万人規模のながはまコホート事業のデータを用いて統計学的に解析し、臨床や政策に応用出来るエビデンスをつくることであった。本年度は、アウトカムを喪失歯とし、歯科の分野における社会経済格差に関する研究を行った。教育歴と口腔の健康の間の詳細な関連や臨床応用に繋がり得る結果が得られたと考えられた。歯科分野における社会経済因子との関連を調査した本研究結果は、次年度からの、歯科疾患と社会経済因子がそれぞれ全身疾患に与える影響を考える上でのベースとなり得ると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
歯科疾患が全身疾患と関連する際に、教育歴や社会経済因子が介在していることが予想された。今後は、歯周病と関連があると言われているその他の全身疾患(心血管疾患、慢性腎不全、認知症、フレイル等)との関連を、社会経済因子と各種健康行動因子の関連につき網羅的に統計学的解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、本年度結果を元に論文執筆中であり投稿間近である。本来は、本年度中に投稿予定であったが、論文投稿がやや遅れている状態である。論文投稿に関連する英文構成費や採択時に必要な費用が、次年度使用額として生じたと考えられる。次年度は、当初予定していた研究に合わせて、本年度の論文投稿を行う予定である。
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