研究課題/領域番号 |
19K19312
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅井 啓太 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (10646376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育歴 / 喪失歯数 / 全身疾患 / 心不全 / BNP / 歯周病 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、口腔の健康格差と全身疾患間の関連について、社会経済因子がどの様に関連しているかを統計学的に検討した。全身疾患として、特に心疾患に着目した。心不全 は加齢とともに有病率が増加し、主に進行性の疾患であるため早期からの予防が重要である。本研究では、全身性炎症を引き起こす可能性のある歯周病と心不全の生理学的特徴の一つである心筋の伸展ストレス (壁応力) との関連を、代表的な社会経済因子である教育歴(教育年数)を考慮し検討することを目的とした。滋賀県長浜市における地域住民を対象としたながはま0次予防コホート事業において2008 年から 2010 年に30 歳から73 歳までの市民を公募した初回調査および5年後の追跡調査結果を用い7539名を対象とした縦断研究を行った。歯を失う最大の原因は歯周病であることより、歯周病の最終段階の指標として喪失歯数 (MT) を用いた。心筋の壁応力の指標としては血漿B型ナトリウム利尿ペプチド値 (BNP) を用いた。炎症性疾患以外の理由による歯の喪失を含めない初回調査時のMTと5年間のBNPの縦断的変化 (ΔBNP) との関連につき、教育歴を含めた多変量解析を行った。MTとΔBNPの関連は、年齢、性別、BMI、教育歴、糖尿病、収縮期血圧、心臓足首血管指数、eGFR、血清LDLコレステロール、血清総タンパク、ブリンクマン指数、アルコール摂取量、運動習慣で調整した解析を行った。単変量解析、多変量解析ともにMTとΔBNPの間に正の関連を認めた。(多変量解析:coefficient: 0.131、95%信頼区間: 0.053 to 0.209)。喪失歯数は教育歴とは独立して心筋の壁応力と関連していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究結果をもとに、英語論文1本を作成し、海外journalに掲載された。Fukuhara S, Asai K, Fukuhara T, et al. 2021. Association between tooth loss and longitudinal changes in B-type natriureric peptide over 5 years in postmenopausal women: the Nagahama Study. Curr Probl Cardiol. 2021 Sep 25;100997. Online ahead of print. In-press
昨年度の研究目標とした顎関節症と社会経済因子との関連についての研究は、統計解析が終了した。
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今後の研究の推進方策 |
顎関節症は単一の要因によって引き起こされるのではなく、社会学的要因、生物学的要因、および心理的要因の併存疾患が重複する複雑な障害であることが認識されている。長浜スタディ第1期に収集された大規模な疫学調査のデータを用い、顎関節症の症状と心理社会的要因との関係を調査する研究につき統計解析が終了し、論文作成中である。 なお、長浜スタディ第3期は新型コロナウイルス感染症にて約1年間中止となったが、感染拡大が収束し再開となったため引き続き第3期データ収集を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症にて長浜健診が約1年間中止となったためである。現在は再開しており、遅延分のデータ収集のための旅費や物品費等に使用予定である。
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