人工呼吸器関連肺炎(Ventilator-associated pneumonia: VAP)は気管内挿管・人工呼吸器管理の患者に、人工呼吸開始後48時間以降に新たに発症する院内肺炎である。VAPは人工呼吸器装着患者の8~28%に発生し、生命を脅かす可能性もある重大な合併症である。VAPの原因として重要なものは口腔咽頭の病原性微生物を含んだ唾液や分泌物の誤嚥であり、宿主側の要因として抵抗力の低下などが重なり発症するとされている。VAPと口腔ケアの関連性を調べ、有効な口腔ケア方法を確立することがこの研究の目的である。 2018年4月から9月の間に長崎大学病院の集中治療室で、経口挿管による人工呼吸器を装着した20歳から90歳の患者24例にたいして研究を行った。口腔ケアの直前、口腔ケア後1時間、2時間、3時間で咽頭貯留液を採取し、総菌数を検出した。 コントロール群では3%過酸化水素水による清拭を行い200mlの水道水で洗浄し吸引を行った。介入群では口腔ケア後に5mlの10%ポピドンヨードをシリンジを用いて、歯肉、頬粘膜、舌に滴下した。水道水や10%ポピドンヨードを誤嚥しないように、十分に吸引を行い、気管カニューレの再度チューブからの吸引も施行した。 総細菌数を検出した結果、コントロール群では口腔ケアにより一時的に細菌数の減少を認めたが、ケア介入1時間で細菌数の上昇を認めた。介入群ではケア後3時間にわたって細菌数抑制が認められた。
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