人工呼吸器装着患者では人工呼吸器関連肺炎が生じることがある。人工呼吸器関連肺炎は集中治療室(ICU)における最も重大な合併症の一つであり、その予防法についてさまざまな試みが行われている。人工呼吸器関連肺炎は口腔咽頭貯留液中の病原性微生物が気管カニューレに沿って下気道に流入することにより発症すると考えられることから、口腔内の細菌数を減少させることが予防法の一つになり得る。しかし有効な口腔ケア方法は確立していない。 本研究ではオキシドールとポビドンヨードによる人工呼吸器装着患者に対する口腔ケアを行い、咽頭貯留液中の細菌についてreal-time PCRを用いて定量的解析を行うことを主要な目的としている。その結果、口腔ケアにより咽頭貯留液中の細菌数は減少すること、しかし3時間後には再び増殖すること、ポビドンヨードによる清拭を加えると3時間程度は細菌数減少効果は持続すること、などが明らかとなった。 これらの結果を受けて、実際にICUにおける口腔ケアと人工呼吸器関連肺炎の発症に関する臨床研究を実施した。新型コロナ感染症の流行により多施設との連携に支障が生じたため、症例の登録が遅れ、1年間延長申請を行った。現在16例に対してオキシドールとポビドンヨードによる口腔ケアを行っており、人工呼吸器関連肺炎の発症は認めていない。今後さらに多数例を用いて検討を進めていく予定である。
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