近年の超高齢化に伴い、老化による運動機能低下が誤嚥を惹起する原因として大きな問題となっている。中でも、高齢者に多い安静時の誤嚥は喉頭蓋谷に貯留した異物を無意識に誤嚥し、肺炎を慢性化させることから、喉頭蓋谷の加齢変化に対する構造解析が病態解明のために急務である。申請者は献体を対象とした研究から、舌の筋萎縮が他の筋よりも大きいこと、喉頭蓋谷の粘膜下が舌筋と喉頭蓋軟骨、それらを接合する腱により構成されていることを見い出した。この結果から舌筋―腱―喉頭蓋軟骨を一つの運動器として捉え 『老化による舌筋の器質的な変化 → 舌筋の筋力 低下による喉頭蓋の後傾 → 喉頭蓋谷後壁の平坦化』 というカスケードで安静時の誤嚥の新たな 発症機序を考えた。そこで、本申請課題の目的は、加齢による舌筋―腱―喉頭蓋軟骨の形態変化が嚥下機能に与える影響を解明することである。また、喉頭蓋谷の加齢変化を基礎医学的に 解明することで誤嚥防止に貢献をし、健康寿命の延長にも波及効果があると考える。本申請課題では、加齢による舌筋―腱―喉頭蓋軟骨の形態が嚥下機能に与える影響を解明する。そのために、喉頭蓋谷の粘膜下を構成する舌筋―腱―喉頭蓋軟骨を一つの運動器として捉え、この運動器の形態変化と機能変化を解析する。本年度は、献体を対象として、喉頭蓋谷粘膜下の構造を明らかにした。また、舌筋―腱―喉頭蓋軟骨における個体ごと変化を組織学的に明らかにし、喉頭蓋谷の構造変化に対する嚥下機能の低下を形態学的に考察する。
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