本研究は、歯科診療情報・歯科検診(健診)情報を蓄積して、臨床研究・医療政策提言の基礎となる診療情報データベースを実現するために必要な、情報流通の環境を構築することを目的としている。情報流通においては、(1)情報の標準化、(2)プラットフォーム、および(3)エッジとなる医療機関等における利用環境の構築の3要素が相互に密接に関連している。今次の研究期間においては、(1)の情報の標準化として、厚生労働省標準となった口腔診査情報標準コード仕様にとどまらず、歯科外来診療サマリーの標準化に関する提唱、診療報酬オンライン請求ネットワーク・オンライン資格確認ネットワークにおける新たな歯科情報の流通に関する提案を行なった。また、口腔診査情報標準コード仕様は、歯科診療行為の拡大・変遷や歯科病名の収載などの外部環境の変化に追随して変化するものであるため、仕様のメンテナンスにコントリビューターとして参画することで、仕様の変遷を継続的に理解する立場にあった。 昨年度に引き続き歯科医療情報を二次利用するための「リレーショナルデータベース(RDB)」データモデルの構築に取り組んだ。二次利用に有用な粒度を検討する必要性があるため、臨床疫学の研究者と共に、種々の口腔診査の場面で発生する情報の粒度や種類についての検討を行った。情報処理関係の進捗として、サーバ仮想化技術を用いた仮想計算機基盤上に構築したコンパクトかつ高速なデータベースサーバーに配置することで、単一のデータセンターでの運用だけでなく、クラウド型システムや分散型システムへの展開が可能となるアプリケーションの提案を行った。これらの研究の成果を学会において発表した。また、論文公表の準備を行っている。
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