研究課題/領域番号 |
19K19330
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩本 優子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (00748923)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯科保健教育 / カンボジア / 東南アジア / 小児歯科保健 |
研究実績の概要 |
東南アジア地域、特にカンボジアにおいて歯科保健教育を実現するにあたり、研究費採択以前より口腔内診査や歯科保健指導の実施に関するフィールドワークを実践してきた。これを継続、発展させ、さらなる分析を行うことで、現地のニーズに即した歯科保健教育を開発し、現地機関への働きかけを通じて、それらの普及を目指す研究を展開する予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため、昨年度に続き、2020年度も、国外に出向いての研究実施をできない状態でいる。この報告書を記載している現在も、日本国内で移動の自粛が求められているが、フィールドとしているカンボジアでは都市部のロックダウンが行われている。 そこで、本研究としては、まずはこれまでに実施した診査結果を集計、分析することを実施してきた。2020年度には、IAPD20 Virtual Congress of the International Association of Paediatric Dentistry において発表を行い、英語論文として現在投稿中である。 また、当該研究に関連して昨年度より、「JICA草の根技術協力事業」と「医療技術等国際展開推進事業」に協力しており、これらの事業に関しても新型コロナウイルス感染拡大のために大きな内容変更を余儀なくされたものの、現地へ送付する資料作成等のための情報提供を行った。 コロナ禍において、教育現場でもオンライン化の動きが顕著にみられるが、カンボジアの小学校においては、残念ながら、電気通信環境、設備、予算、現場の技術水準等様々な事由から、現状では非常に困難である。しかし、歯科医療従事者や政府機関とのやりとりはWeb経由である程度可能であるため、直接渡航が叶わない現在、オンラインでの打ち合わせを続け、歯科保健教育やその指導方法を伝えるための動画教材・模型の作製等を計画し、進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画段階では、2020年3月および2021年3月にカンボジアでの現地調査等を予定していたが、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大のため、実施できていない状況である。当初は、少し時期をずらして渡航することを考えていたものの、未だ終息の兆しは見えず、現時点で日本国内を含め諸外国の感染拡大の終息が予測できないことから、次なる渡航時期を決められずにいる。今回の研究年次の半分が過ぎた今、現地調査なしに研究を進めていくという方向転換も迫られていると考えている。 一方、これまでに得たデータの集計と分析については、日本における緊急事態宣言中もテレワークを活用したり、日本に留学のため居住しているカンボジア人の学生等の協力も得て実施している。また、オンライン等で学術集会の実施が再開されたことから、成果発表の場も確保できるようになってきた。 今後の調査研究のための準備や、そのための教材の作製等、新たな取組も開始しており、オンラインでの打ち合わせを続けるほか同様にカンボジア人留学生の協力も得て、特に教材作製の面から研究を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
日本国内での研究活動についても、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を少なからず受けているが、新しい生活様式下における活動の再開に準じて、引き続き進めていく予定である。 新たに現地での調査や介入、評価等を実施するには、当初の研究計画では渡航が必要であるため、この状況が長引くようであれば、直接的な渡航と介入によるものではなく、Webを介した取り組み等、研究方法の変更も検討していく必要があると考えている。しかし、フィールドとしているカンボジアにおいてのインフラ状況や協力者となる保健省関係者や医療従事者が新型コロナウイルス感染症の対応に追われている現状では、協力を依頼するのが難しい可能性もある。また、カンボジア国内では、現在いくつかの都市部でロックダウンが実施され学校も休校中であるが、個人のクリニックを始めとした医療機関も営業できていない状態であり、その他の業種についても休業を余儀なくされている。日本ではこれらの措置に対して、多少の補償金を支払い最低限の生活を維持しようとする制度が実施や検討されているが、残念ながらカンボジア政府からそのようなケアは無いに等しいため、コロナ禍および終息後にも、国民の生活環境には大いに配慮する必要がありそうだと考えている。 今後は、これまでに得ている結果の集計や統計、公表を進めていく他、オンラインでの打ち合わせを続け、歯科保健教育やその指導方法を伝えるための動画教材や、ボードシアター型のぬいぐるみ模型の作製等を継続する予定である。 研究期間中の見通しにおいて、これまでのフィールドでの研究継続が難しい場合は、国や地域の新たな選定を実施する可能性もある他、日本国外での研究継続が困難であれば、オンラインでのできる範囲の継続、また作成した歯科保健指導システムについて日本国内の園児や児童を対象として評価を行う等の、大きな方向転換を行う可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査研究のための渡航費、現地での様々な業務委託費、物品費等を計上していたが、渡航延期となったために昨年度および今年度は使用せず、渡航までの準備に要したものや、国内の成果発表等に対して予算を使用するに留まった。今年度はさらに、予定していた海外での成果発表等も軒並み現地開催が中止となった。次年度以降、渡航できる状況となった際、また、現地での学会等の開催が再開された場合には、予定していた研究計画のために使用することとなると考えている。 一方で、他の項目で述べてきたように、このまま現地調査の実施が難しい可能性もあり、研究計画の方向転換も視野に入れているため、歯科保健指導のための教材作成に向けた機材の整備やソフトウェアの購入、材料の調達といった方面にも使用していく予定である。 また、これまでの結果について、論文投稿を進めているため、それらの英文校正や投稿料等の支払いにも充てる予定がある。
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