研究課題/領域番号 |
19K19332
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中嶋 千惠 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (40812657)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 口腔内細菌 / Clostridium perfringens / クローディン4 / YAP |
研究実績の概要 |
本年度は、口腔内細菌叢の常在細菌であるClostridium perfringensの口腔癌における役割について検討した。クローディン(CLDN)4の発現を口腔扁平上皮癌で調べたところ、57例中22例(39%)が核に免疫反応性を示した。核CLDN4陽性の症例は、陰性の症例よりも癌の進行と強い相関を示した。腫瘍内嫌気性細菌のDNAをPCRにて検討すると、Clostridium perfringens菌陽性例の81%で核CLDN4発現が明らかになった。ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC3およびHSC4をClostridium perfringens enterotoxin(CPE)で処理すると、CLDN4核移行が誘導され、上皮間葉転換(EMT)、幹細胞、細胞増殖、および浸潤能が増強された。さらに、CPE処理により、YAPのリン酸化を抑制し、YAP核移行を促進し、、さらに、サイクリンD1および結合組織成長因子といったYAP標的遺伝子の発現を増加させた。さらに、YAP1、CLDN4、ZO-2の複合体がCPE処理によって形成され、LATS1によるYAP1リン酸化を抑制し、YAPを活性化することが明らかになった。したがって、口腔扁平上皮癌でのYAPの活性化は、悪性形質を促進する上で重要であると見なされた。本研究から、口腔内衛生による嫌気性細菌の制御がYAPの活性化を抑制し、腫瘍の進行を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔内細菌と口腔癌進展の関連性をCPEから示すことが出来た。おおむね順調な研究の進展と見なされる。
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今後の研究の推進方策 |
Clostridium perfringensと口腔内免疫状態について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた実験の実施が本年度に延びてしまったため、次年度使用額が発生した。当該研究については現在実施中であり、予算はこれに使用している。
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