研究課題/領域番号 |
19K19332
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中嶋 千惠 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40812657)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Clostridium / Claudin4 / YAP / EMT / SSA/P |
研究実績の概要 |
前年度の検討で、ClostridiumがClaudin4のタイトジャンクションからの遊離を介してYAPを活性化することを見出した。本年度は、同様のClostridiumのYAP活性化が大腸癌前癌病変の癌化促進につながることを検討した。 Sessile serrated adenoma/polyp with dysplasia (SSA/P-D) は、細胞異形成を伴う SSA/P で、大腸発がんに進展するリスクが高いとされている。SSA/PDの12例では、E-cadherinの発現が正常粘膜、SSA/P、管状腺腫(TA)に比べ低かった。さらに、CLDN4の細胞内転位とYAPの核内転位が観察された。また、SSA/P-D病変から抽出したDNAにはCPE遺伝子が検出されたが、SSAPやTAでは検出されなかった。ラット腸管上皮細胞株IEC6を低用量CPEで処理すると、CLDN4が細胞質膜に細胞内転位した。細胞質内のCLDN4は、TAZ、ZO-1、LATS、MSTと共沈していることが確認された。また、CPE処理によりYAPはZO-2と共沈し、YAPのリン酸化と核内移行が減少した。YAPの活性化は、幹細胞化、上皮間葉転換(EMT)を誘導した。BRAFV600E遺伝子変異を有するHT29細胞は、低用量CPE処理により、増殖、浸潤能の増強、幹細胞性、EMT表現型の誘導を示したが、KRASG13D遺伝子変異を有するHCT116細胞はそのような変化を示さなかった。また、10例の大腸がんを調べたところ、CPE(+)、BRAF変異(+)例でEMTと幹細胞の増加が観察された。これらの知見は、C. perfringens が YAP 活性化を介して SSA/P-D の悪性化を促進する可能性を示唆している。また、プロバイオティクスや抗生物質による腸内フローラの制御の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度発見した口腔内細菌Clostridiumの癌促進作用が大腸癌前癌病変でも認められることを明らかにし、細菌叢の制御の重要性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Clostridiumを抑制する有効な衛生方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
口腔衛生によるClostridiumの抑制を検討するための動物実験が年度内に終了しなかったため、これに必要な費用を次年度使用額とした。
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