昨年度まで、非細胞膜クローディン4が細菌叢内のClostridium perfringensにより生成され、YAPの活性化からがん化あるいはEMTをもたらすことを明らかにした。本年度は、非細胞膜クローディン4生成の他の経路について検討した。高転移性ヒト腎細胞癌SN12L1では、核分画にCLDN4が見られたが低転移株SN12Cでは認められなかった。SN12L1では、細胞膜CLDN4にリン酸化は認められなかったが、細胞質CLDN4ではチロシンとセリン残基にリン酸化が、核内CLDN4ではセリン残基のリン酸化が見られた。SN12L1では、EphA2/ephrinA1によるCLDN4チロシンリン酸化がCLDN4のタイトジャンクションからの遊離と細胞質移行をもたらした。さらに、PKCEはCLDN4セリン残基をリン酸化し核内移行をもたらした。これに対し、SN12CではEphA2/ephrinA1とPKCEは低発現であるが、それぞれを活性化することによりCLDN4の細胞質内移行と核内移行が誘導された。さらに、CLDN4の核内移行に伴って、CLDN4と結合したYAPの核内移行が生じ、EMT形質が誘導された。これらの所見から、タイトジャンクション障害によるCLDN4の遊離はがんの悪性化のひとつのメカニズムとなることが示唆された。
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