慢性疼痛は患者本人のみならず周囲の人にまで影響を与え、3500億円の社会的損失があると言われている。治療法としてはストレッチ等を含めた運動療法が最も効果があると報告されているが、その普及は十分とは言えない。また運動療法の大部分が患者のセルフケアで行われるため、患者の理解度などによって効果に大きく差が出てしまう。さらに医師や患者が運動療法に理解が無い場合、治療効果の期待できない薬物療法等を依存的に長期間行い、より慢性疼痛を複雑化させて しまっている。そこで、普及したスマートフォンを利用し、「医療アプリ」というものを作製・配布し、患者のセルフケアのサポート及び、質の高い疾患管理を行うという方法を考えた。今回は、われわれの領域の慢性疼痛である顔面痛の約8割を占める「筋・筋膜痛」の治療で実践し、治療効果の比較検討とアプリ自体の評価を行うこととした.医療系アプリということで,Appleに承認されるまでに時間がかかってしまったが,2021年3月には理学療法アプリは完成し,3月末までに説明書も作成した.学内での倫理申請も既存のものを修正しアプリの使用が可能となったため,新規患者さんを中心に患者の利用を2021年3月末より開始した.アプリの主な内容は,主治医によって組み込まれたセルフケア動画を視聴しながら実践するというノルマが患者さんに課されること,毎日の痛みの評価をアプリ上で行うこと,痛みについてしっかり正しい知識を身につけるという疾患教育をコラムを作成して行う点である.これまでアプリを利用した症例の1例発表などを行ってきたが,アプリを通して得られた140 以上のデータをもとに,患者の主訴の分布,理学療法の施行時間,改善傾向などを統計学的に分析し,理学療法の有用性を検討していく.
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