令和2年度においては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大により、摂食嚥下リハビリテーションの対面診療について慎重な対応が求められた。そのため、COVID-19感染蔓延下に対面での診療を中断した患者に対してオンライン診療を実施し、その有用性を検討した。 対象は、摂食嚥下リハビリテーションを専門とする日本歯科大学附属病院多摩クリニックを受診する摂食嚥下障害患者とし、令和2年4月12日緊急事態宣言発令前より定期的な外来診療もしくは訪問診療の実績があり、かつ緊急事態宣言期間(令和2年4月12日~令和2年5月25日)に対面診療中断となった21名とした。緊急事態宣言期間中にオンライン診療での嚥下訓練と食事指導を行い、期間中の肺炎発症、入院の有無、オンライン診療移行前と対面診療再開後での摂食状況(Food Intake LEVEL Scale:FILS)、栄養状態を比較し検討した。また、アンケートでの意識調査を行った。 結果として、オンライン診療によりFILSが向上した者は3名、低下した者は2名、変化のなかった者は16名であった。発熱を4名に認めたが、いずれも入院には至らなかった。体重減少率が3%以上の者はみられなかった。FILSが向上した3症例は、いずれも家族以外の医療職や介護職の同席や他職種を介した「Doctor to Patient with Nurse (D to P with N )」の診療形態であった。アンケート調査では、オンライン診療の効果として感染リスク低減や安心感が得られたと回答する者が多くみられた。 感染リスクを考慮した摂食嚥下リハビリテーションの診療形態としてオンライン診療は嚥下機能維持・向上に寄与し、また患者不安を低減した。オンライン診療での摂食嚥下リハビリテーションや食事指導は対面診療を補完する診療形態として有用であることが示された。
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