本研究の目的として1.糖尿病者と非糖尿病者における歯周病状態の比較検討 2.糖尿病者において,何が歯周病重症度へ寄与しているか 3.糖尿病者において歯周 病重症度が生命・心血管疾患の予後へ影響を及ぼしうるかの3点について明らかにすることにより、歯周病実態が糖尿病患者の生命・心血管疾患の予後へどのよ うに関与するか,歯周病の改善・悪化が生命・心血管疾患予後へ関わり得るか,明らかにすることができる。これにより歯周病治療,あるいは歯周病予防を行う ことで糖尿病や心血管疾患といった全身疾患の予防に寄与できると考え,特に高齢患者のQOL向上に つながると考えている。 そこで当該年度において研究実施計画書に則り、対象患者の情報の収集(322名の非糖尿病患者、糖尿病患者)を行った。加えて2型糖尿病と非糖尿病の歯周組織の状態の比較は多く報告されているが、日本における1型糖尿病の情報は少ないことに着目し、1型糖尿病の歯周組織の現状を把握するために、非糖尿病の者、1型型糖尿病患者および2型糖尿病患者の歯周病指標を比較した。歯周病指標である平均PD、PD 4 mm以上部位率、PCR、動揺歯率では非糖尿病、1型糖尿病および2型糖尿病の3群間で有意差が見られ、1型糖尿病は、非糖尿病と2型糖尿病の中間に位置した。重回帰分析では平均PD、PD4 mm以上部位率、PCRおよび動揺歯率は、非糖尿病よりも1型糖尿病および2型糖尿病で有意に高値を示したが、1型糖尿病と2型糖尿病の間には有意差はなかった。このことより1型糖尿病患者は2型糖尿病患者と同程度の歯周病状態であり、非糖尿病の者よりも重度であることがわかった。以上の内容を歯周病学会にて発表した。
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