オーラルフレイルの早期発見を目指すため口腔閉鎖力に関する新たな知見を得て、評価方法を検証することを目的とした本研究を実施した。口唇機能を評価するためには、従来の手法では大型の機器や複雑な手順が必要とされたが本研究では、2017年7月付けで特許が認められた「口腔または咽頭の気圧をモニタリングする装置」(特許第6174965)を応用した、口腔内圧、口輪筋筋電図、口唇閉鎖圧を同時に測定できる複合センサを用いた。まず複合センサについて検証したところ、従来の方法よりも測定時間が有意に短縮され、感度も高いという結果から、測定方法の有用性が示唆された。ただし、対象者が下顎前突の場合、センサをくわえることが困難であったため改良を要することが明らかとなった。先行研究で舌圧は女性よりも男性の方が高く出るとの報告があるが、口唇閉鎖力も同様に男性の方が有意に高い傾向にあった。口唇閉鎖力と他のタスクとの関連性については、女性では口唇閉鎖力が弱いほど口腔乾燥が生じている傾向にあったが、口腔乾燥は更年期や内服薬などの他の影響も考えられるため、今回の研究では関連性を言及できるまでに至らなかった。また、最大限に口唇閉鎖したときの最大口唇閉鎖力と握力との相関は男女ともにみられたが、データが30~40歳代と比較的若い層に偏ってしまったため、口唇閉鎖力とサルコペニアの検証については、高齢者層のデータを増やして上で今後再検証したいと考えている。
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