研究課題/領域番号 |
19K19345
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金 雪瑩 筑波大学, 医学医療系, 助教 (00832148)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ケアの質評価 / 介護施設 / 介護保険制度 / アウトカム評価 |
研究実績の概要 |
高齢化の進展に伴い、要介護高齢者の増加、介護期間の長期化など、 介護ニーズはますます増大している。一方、核家族化の進行、介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況も変化している。このような状況に直面したわが国では、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みを創設し、平成12年から公的介護保険制度を実施した。介護サービス市場が民間に開放され、介護サービスの供給は一気に拡大した。一方、介護サービスの急増に伴い、虐待事件の増加や不正により指定取り消しを受けた事業所の増加など介護サービスの質の保障が重要な課題となってきた。 介護サービスの質の確保のための取組としては、これまでも政府を中心に第三者評価、情報公表制度など行っているが、協力施設が少ない、アウトカム評価が乏しい、調査結果の利用者への利用率が0に近いなどの問題がある。 そこで、本研究は、医療・介護レセプトの突合データを用いて、施設ケアの質の指標を開発することを目的としている。 今年度は、データ分析を行うための準備に努めた。研究を行うために柏市と山武市に詳しい研究内容の説明をし、データ利用の承諾を得た。その後、倫理申請を提出し、2回程度のコメントによる修正を行い、令和2年1月に承認を受けた。2月からは、変数表作成、過誤調整、重複データ削除などのデータクリニックの作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、具体的に3つ課題を明らかにする予定である。① 医療レセプトと介護レセプトを活用し、施設のケアの質の指標を開発する。② 算出された施設のケアの質の指標のもと、ランキングをつけ、問題となる施設を見つける。 ③ ケアの質向が高い施設への改善方法を提案する。 今年度は、データ分析の前の段階である、先行研究のレビューおよびデータ利用の承諾、データマネジメントに努めた。医療・介護レセプトに含まれている情報と先行研究のレビューを合わせた結果、利用者アウトカム評価指標として、要介護悪化率、在宅復帰率(介護老人保健施設のみ)、骨折率、入院率、死亡率が算出可能であることが分かった。 データ利用については、柏市・山武市の承諾を得た。分析可能な施設数を増やすため、つくば市のデータも追加する予定である。また、本研究は筑波大学で倫理審査の承認を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までは、データ分析にための準備を整った。二年目からは、データ分析に着手する予定である。 研究の対象者を柏市と山武市の介護保険施設に入所した75歳以上の利用者にし、アウトカムを要介護悪化、入院、骨折、死亡とする。利用者の身体状況は医療レセプトから得た疾病情報を介護レセプトと突合し、利用者の身体状況の調整を行った上で、施設全体の要介護度悪化率、入院率、骨折率、死亡率を算出する。上記で算出した指標の結果に基づき、市民によりわかりやすくするため星マークの数でケアが高いか低いかを表示する。 三年目は、ケアの質が悪い施設と高い施設を比較し、ケアの質の向上に関連する要因を明らかにし、改善案を提言する予定である。説明変数は施設ケアの質の指標ごとに抽出された質の高い施設と低い施設であり、統計分析はロジスティック回帰分析を行う。 上記の研究は、研究学術会や国際学会誌に論文を投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一年目に分析用のパソコンを買う予定でしたが、倫理承認を得たのが令和2年1月になり、データを弄れる時期が遅れていました。2月からはコロナウイルスの影響でパソコンを注文しても納品の見込みが不明であり、本研究の2年目から購入することにいたしました。そのため、分析パソコン用の差額が生じました。
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