本研究では、受療行動に影響するかかりつけ医に求める質を明らかにするため、大学病院総合診療科外来初診患者に対して、プライマリ・ケアの特性(近接性、継続性、協調性、包括性(必要な時に利用できる/実際に受けたことがある)、地域志向性)に関する質評価尺度JPCAT(Japanese version of Primary Care Assessment Tool)と受療行動との関連を調査した。 2020年5月から2021年3月にアンケート調査を実施し、解析対象者は204名、かかりつけ医からの紹介あり群112名(55%:かかりつけ医からの紹介87名(43%)、かかりつけ医に紹介された医師からの紹介15名(12%))、紹介なし群92名(45%:かかりつけ医以外からの紹介68名(33%)、紹介なし24名(12%))であった。JPCAT6領域の各得点および総合得点、主治医の属性、患者背景を独立変数、主治医からの紹介あり群、なし群を従属変数としてロジスティック回帰分析を行ったところ、紹介あり群において、近接性(OR 2.2[95%CI=1.2-3.9])、協調性(4.1[1.9-8.9])の得点が有意に高かった。 かかりつけ医がいても受診しない、紹介されない患者が多くいる実態が明らかになり、受診しなかった理由は診療科が異なると思ったからが最多であった。これはフリーアクセスの弊害である可能性とともに、かかりつけ医が必ずしも全領域診療に対応できているわけではないことが理由として考えられた。 近接性(いつでもかかれる)、協調性(適時適切な紹介)がかかりつけ医からの紹介状を持参する独立因子であることから、それらの向上をはかる仕組みを構築することで、主治医をバイパスしない紹介を促し、結果として主治医によるゲートキーパー機能の向上が期待される。
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