研究課題/領域番号 |
19K19367
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
齋藤 翔太 聖路加国際大学, 臨床疫学HTAセンター, 特任講師 (60739465)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 難病法 / 医療経済 / レセプトデータベース |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は難病法改正が及ぼした炎症性腸疾患治療法選択の変化と医療費構造の解明である。難病法施行後の医療費助成対象者および非対象者の健康状態の実態はいまだ明らかとなっておらず、転機を迎えた日本の難病政策の公平性・有効性の検証は不十分である。 初年度は本邦における炎症性腸疾患の疫学に関する基礎調査を実施した。難病法改正における医療費補助の打ち切り割合に関するデータが皆無であったため、独自の調査を実施し、難病法改正後の医療費助成の実態と患者の健康状態を明らかにした。炎症性腸疾患は寛解と再燃を繰り返す若年者に好発する慢性疾患であり、医療費助成の対象外となると患者QOLが低下する可能性がある。本年度の調査データからは難病法施行に伴う医療費補助制度の変更により炎症性腸疾患患者のQOLは下がることはなく、不利益は生じていないと考えられた。これらの途中経過は論文にまとめて国際学術誌へ投稿中である。また、クローン病と比較して潰瘍性大腸炎の方が軽症認定による医療費助成の打ち切り割合がおよそ3倍高かった。これは高額な生物的製剤の治療の導入率が潰瘍性大腸炎よりもクローン病の方が極めて高いことが理由と考えられた。強力な治療の継続を必要とする寛解症例は医療費助成の「高額かつ長期」の区分として適切に認定され、治療継続が行われているということが推察される。 次年度はこれらの疫学データをもとに、レセプトデータベースを用いたヒストリカルコントロールデータの仕様定義および統計解析を展開していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度後半に新型コロナウィルスの拡大で研究協力者とのミーティングが滞った。多少の遅れは生じているが、当初の計画へ大きな影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
レセプトデータベースのデータ抽出を年度内の目標とする。研究計画では民間レセプトデータベースを使用するとしていたが、所属施設の変更に伴いナショナルデータベース(NDB)の利用可能性がありどちらが有用か検討を進める。データの定義には炎症性腸疾患の臨床医に協力を仰ぎ、仕様定義を決定していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた学会が新型コロナウィルスの影響により中心になったことにより旅費の支出がなくなった。また、今年度の研究作業の工程で外注作業が発生しなかったことにより人件費の支出が行われなかった。今後、オンライン会議やデータ管理のクラウド環境構築などの設備投資にこれらの予算を充てていきたい。
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